腐りかけの果実

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
52 / 88
第三章 一節 切り開かれた未来

3-1-6

しおりを挟む

 二人はすぐに近くの遮蔽物へと移動し、ロックの銃弾を躱す。しかしフクロウは遮蔽物へと走る途中足を銃弾がかすめてしまっていた。

「くっ……。」

 柱の陰で足を押さえて苦しそうな表情を浮かべるフクロウ。その様子を見てエリーはあることを判断する。

(あの足じゃ戦うのは無理だな。アタシがやるしかねぇか。)

 そしてエリーは一気に飛び出すと同時にハンドガンを二発撃つ。しかしロックは撃つ瞬間の銃口の位置を見極め、飛んでくる銃弾を腕で庇った。

「効かねぇぜこんな豆玉ァ!!」

 エリーの銃弾を庇ったロックはすぐに重機関銃をエリーへとむけて放とうとするが、一瞬視界を腕で遮ってしまったことによりエリーの姿を見失ってしまっていた。

「チッ、狙いはこれか。」

 すでにロックの背後に回り込んでいたエリーは持ち替えていたナイフをロックの首に突き立てる。しかし、皮膚を貫いた瞬間刃から硬い感触が伝わってくる。

「首の下にも金属仕込んでやがんのか。」

「残念だったなぁ!!」

 ロックは乱暴に重機関銃を鈍器代わりにして背後にいるエリーを殴ろうとする。鈍重なロックとは違い身軽なエリーはそれを軽いバックステップで躱す。すると、何を思ったのか彼女は懐から煙草を出して火をつけて吸い始めたのだ。

「ふぅ……。」

「千載一遇のチャンスを逃して最後の一服ってか?」

「ば~か、足元よく見てみろよ。」

 煙草の煙を吐きながらエリーは言った。警戒しながらロックが足元に目をやるとそこにはピンが抜かれた手榴弾が転がっていた。

「しまっ!!」

 気が付くと同時にそれは爆発し、ロックの体は爆発に巻き込まれてしまう。それを眺めてエリーはぽつりと言う。

「いくら体に金属埋め込んでたって爆発の衝撃を逃がせるわけじゃねぇだろ?」

 そして爆発が収まると、もうズタボロになっているロックが倒れていた。しかしまだ息がある。そんな彼にエリーは近づくとハンドガンを突き付けた。

「あばよ。」

 一発引き金を引くと、今度こそロックの息の根が止まる。

「ひ、う、嘘だろ!?」

 逃げ出そうとする半グレのリーダーの男。エリーは容赦なく男の両足を撃ち抜いた。

「あぎぃぃぃぃっ!!」

「テメェはそこで大人しくしてな。」

 そしてエリーは怪我をしたフクロウへと駆け寄る。

「おい、大丈夫か?」

「掠めただけです。このぐらい……。」

 そう強がってはいるものの、撃たれた場所が悪い、撃ち抜かれている太ももからは血がどくどくと溢れて止まらない。

「動くな、今止血してやる。」

 エリーは慣れた手つきでフクロウの太ももに包帯を巻き、圧迫して止血する。

「ん、これであとはお袋が何とかやってくれるだろ。」

「……感謝します。」

「いいってことよ、ほんじゃ終わらしてくるぜ。」

 エリーは這いずってでも逃げようとしていた男を銃で撃ち抜いて殺した。

「にしても、なんでこんな半グレがロックみてぇな用心棒雇ってやがるんだ?ロックの野郎はビジネスとか言ってやがったが……少し調べてみるか。」

 エリーはロックたちが出てきた部屋の中を調べ始める。すると、巧妙に隠されたアタッシュケースを発見する。

「こいつが怪しいな。」

 アタッシュケースにかかっていた鍵を銃で撃って破壊するとエリーはそれを開けた。すると中には見覚えのあるものが入っていた。

「……!!こいつはっ。」

 中に入っていたのは赤い液体が入っている瓶。

「吸血鬼化する薬だ。まさかこいつで何かビジネスをやろうとしてたのか?……考えるのは後だ、今はこいつを持ち帰ってフクロウの手当てをしてもらわねぇと。」

 エリーはそれを再びアタッシュケースにしまうと、怪我をしたフクロウを連れてラボへと戻るのだった。



 フクロウをラボに連れて帰ると、すぐにリースが彼女の処置を施した。

「うん、一先ずこれで良し。まぁ一週間は安静だね。」

「ありがとうございます。」

「いいってことさ、ツバキのお付きさんだからね。キミ達にはしっかりとツバキを守ってもらわなきゃ。」

 そしてフクロウの処置を終えたリースはエリーのもとへと向かう。

「お待たせエリー。」

「フクロウは?」

「大丈夫、あの分ならすぐに元の生活に戻れるさ。それで、ヤバいものを見つけてきたって言ってたけど、何を見つけてきたんだい?」

「こいつだ。」

 エリーは赤い液体の入った瓶をリースに見せた。

「こいつは吸血鬼化する薬に間違いねぇ。前に死んだときリンの家で同じのを見た。」

「ほぅ!!これは思わぬ収穫だね。」

「こいつが何なのか、調べてもらってもいいか?」

「もっちろん!!お母さんに任せなさい。」

 無い胸を張り、リースは自信満々にそういったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

囚われの姫〜異世界でヴァンパイアたちに溺愛されて〜

月嶋ゆのん
恋愛
志木 茉莉愛(しき まりあ)は図書館で司書として働いている二十七歳。 ある日の帰り道、見慣れない建物を見かけた茉莉愛は導かれるように店内へ。 そこは雑貨屋のようで、様々な雑貨が所狭しと並んでいる中、見つけた小さいオルゴールが気になり、音色を聞こうとゼンマイを回し音を鳴らすと、突然強い揺れが起き、驚いた茉莉愛は手にしていたオルゴールを落としてしまう。 すると、辺り一面白い光に包まれ、眩しさで目を瞑った茉莉愛はそのまま意識を失った。 茉莉愛が目覚めると森の中で、酷く困惑する。 そこへ現れたのは三人の青年だった。 行くあてのない茉莉愛は彼らに促されるまま森を抜け彼らの住む屋敷へやって来て詳しい話を聞くと、ここは自分が住んでいた世界とは別世界だという事を知る事になる。 そして、暫く屋敷で世話になる事になった茉莉愛だが、そこでさらなる事実を知る事になる。 ――助けてくれた青年たちは皆、人間ではなくヴァンパイアだったのだ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ヴァンパイアキス

志築いろは
恋愛
ヴァンパイアおよびグール退治を専門とする団体『クルースニク』。出自ゆえに誰よりもヴァンパイアを憎むエルザは、ある夜、任務先で立ち入り禁止区域を徘徊していた怪しい男に遭遇する。エルザは聴取のために彼を支部まで連れ帰るものの、男の突拍子もない言動に振り回されるばかり。 そんなある日、事件は起こる。不審な気配をたどって地下へ降りれば、仲間の一人が全身の血を吸われて死んでいた。地下にいるのは例の男ただひとり。男の正体はヴァンパイアだったのだ。だが気づいたときにはすでに遅く、エルザ一人ではヴァンパイア相手に手も足も出ない。 死を覚悟したのもつかの間、エルザが目覚めるとそこは、なぜか男の屋敷のベッドの上だった。 その日を境に、エルザと屋敷の住人たちとの奇妙な共同生活が始まる。 ヴァンパイア×恋愛ファンタジー。 この作品は、カクヨム様、エブリスタ様にも掲載しています。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

処理中です...