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二節 死に戻りのリベンジ
2-2-13
しおりを挟むエリーが目を覚ますと、またしてもあの密林へと時間が戻されていた。
その光景に彼女はギリギリと歯軋りすると拳を地面に叩きつけて吼える。
「クッソがっ!!」
怒りに任せて振るわれたその拳は深く地面にめり込む。
「誰だか知らねぇがアタシの体を好き勝手使いやがって……。」
怒りを爆発させているエリー、その矛先は自分へも向く。
「アタシもアタシだ、肝心な時にスカしやがって!!」
再びエリーが拳を地面に叩きつけると、強く握る彼女の拳から血が滴り落ちた。
「この血液……。」
手のひらに付着した血液にエリーが意識を向けるが、その血液は蠢く気配はない。ただただカピカピに乾いていくだけ。
「チッ、ダメか。」
舌打ちをした彼女の目の前を補給部隊が通り過ぎていく。
「また今回もこっからだ。」
補給部隊が過ぎ去ったあと、密林を抜け出したエリーはリースと連絡を取り、日本へと向かうのだった。
日本に着いたエリーは早速覚えているだけのパイルバンカーの設計図を書き出し、リースに見せた。
「ん~、なるほど……。流石は私、いい設計するね~。惚れ惚れする。」
エリーの書き出した設計図を眺めてウットリとするリース。しかし、エリーへとあることを問いかける。
「ちなみにさ、これの使用感はどうだったの?」
「威力は申し分ねぇ、あとはアタシが野郎の心臓に当てられるかどうか……それだけだ。」
「技量次第ってとこね。まぁこんな感じでちゃんとした設計図もあるし、早い段階で作れそうだから何回か試用はできると思う。」
「ん、そいつは助かる。ほんじゃアタシはアタシで芦澤カナの確保に動くぜ。」
「今回はどうするの?」
リースが問いかけたのは今回の芦澤カナの確保方法である。その問いかけにエリーは即答した。
「決まってる芦澤カナは生け捕りにして、現れたローブの吸血鬼野郎は殺す。その方が後々に楽だ。」
「確かに、ヴラドと戦うときには邪魔者は入らないほうが良いもんね。この場合メイちゃん達が別の吸血鬼に襲われる流れになるけど……それでいいの?」
「メイ達の安全策はもう考えてる。抜かりはねぇ。」
「それなら結構。じゃ、とりあえずこの対吸血鬼用パイルバンカーのことは任せて。すぐに完成させてみせるよ。」
「あぁ、頼む。」
再びリースの協力を得たエリーは、その後芦澤カナの身柄を確保し、ローブの吸血鬼もいとも簡単に仕留めてしまう。
そしてラボに帰ってきたエリーは、リースとともに仕留めたローブの吸血鬼の死体の前に立っていた。
「で、エリーの経験だと吸血鬼の血肉を食べたら……少し吸血鬼の力が使えるようになるって話だったね。……一応聞くけど、ホントに試すの?」
「あぁ、やってみねぇとわからねぇからな。」
「はぁ~、こんなこと常人ならやろうとは思わないよきっと。」
「アタシだって好き好んでやるわけじゃねぇよ。最悪、パイルバンカーをミスったときの保険をかけとくだけだ。」
「これで死ぬかもしれないのに保険かい?」
「死んだら死んだで、結局アタシが吸血鬼んなったら死ぬ運命ってわかる。どう転んだって後に活かせる。」
「ふむ、そこまで決意が固いのなら止めないよ。」
少し呆れたようにリースはそう言うと、注射器を死体の静脈にプスリと挿し込む。そして血液を吸い上げ、グラスの中へと注ぎ込んだ。
「はい、まずは血液。このぐらいあれば足りるんじゃない?」
「ん、多分な。」
エリーは血液の入ったグラスを受け取ると、一瞬躊躇うような表情をみせた。
「…………流石に抵抗があんな。」
ポツリとそう呟くと、彼女は一つ大きく息を吐きだしてからゆっくりとグラスを傾け、血液を口の中へと流し込む。血液が口の中へと入った瞬間……襲い来るのは強烈な鉄の匂い。
結果少し口に含んだだけでエリーはグラスを離してしまう。
「おぇっ、不味すぎる。」
「当たり前でしょ。そもそも人間が口にするものじゃないんだから。」
強烈な体の拒否反応に顔をしかめながらも、エリーは再びグラスに残った血液に目を向けると、今度はそれを一気に全て口の中へと流し込んで飲み込んだ。
「……ッ!!うぷっ!!」
吐き戻しそうになる気持ちをなんとか堪え、用意していた水をがぶ飲みすると、ようやくエリーは一つ大きく息を吐き出した。
「ふぅ~、なんとか飲んでやったぜ。」
「まったく……ホントに馬鹿やるよ。」
すっかり呆れてしまっているリースの隣で指先を少しナイフで傷つけ、血を出したエリーは自分の血液へと意識を向ける。すると少しだけざわざわと血液が不自然に蠢いた。
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