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二節 死に戻りのリベンジ
2-2-7
しおりを挟むターゲットだった松本ヨシキの会社から脱出したエリーはすぐにメイに連絡を入れる。
「メイ、アタシだ。」
『あ、エリー!!心配したのよ、中に潜入してから一切無線がつながらなくなっちゃってたから……。』
「ターゲットの確保は失敗した。だが、一つ有益な情報がつかめたぜ。」
『ターゲットの確保に失敗って……何があったの?』
「アタシと同じ目的のやつがいた。そいつにターゲットを渡す代わりに一つ……情報をもらったんだ。」
『その情報が噓の可能性は?』
「ねぇ。断言できるぜ。」
『そう、それでどんな情報をもらったのよ。』
「吸血鬼化する薬をばら撒いてるやつらが、その薬を使ったやつらを回収してる。今さっきかち合ったやつもその組織の一人らしい。」
『えぇ!?そうなるとかなり厄介かも……こっちがかなり先手を打たないと、リースさんの欲しいサンプルを回収できないわね。』
「ひとまずラボに戻るぜ。詳しい話はそっからだ。」
ターゲットを引き渡す代わりに得た、この事件の核心に迫る情報……そしてエリーの運命にも大きくかかわる重要な情報。三回目の生にてやっと掴んだそれをエリーは脳に深く刻み込みながらラボへと戻るのだった。
ラボに戻り、メイと情報共有を終えたエリーは、まっすぐにリースのもとへと向かう。
「お袋、入るぜ。」
ノックもせずにエリーはリースの研究室の中へと入る。すると機械のメンテナンスをしているリースの姿があった。
「あ、エリーお帰り~。どうだった?」
「ターゲットの回収こそできなかったが、代わりに一つ、いい情報をつかんだぜ。」
エリーは本棚からヴラド三世のことが記載された本を引っこ抜くと、リースの前に広げ、ヴラド三世の顔写真を指さす。
「アタシのことを散々殺しまくりやがったこいつは、吸血鬼化する薬をばら撒いてる組織の一人だ。」
「その情報は……どこから?」
「ターゲットを回収に行ったとき、ちょうどその組織の一人とかち合ってな。ターゲットを引き渡す代わりに教えてもらった。嘘はついてなかったぜ。」
「ふむ、キミに聞かれたことに素直に答える辺り、なかなか義理深い人だったみたいだね。人の道を外れていることをしている組織なのに不思議なものだよ。」
メンテナンスを終えたリースはエリーの報告に苦笑いする。
「さて、エリーもいい報告をしてくれたからね。私からも一ついい報告をさせてもらおうかな。エリー利き手出して。」
「ん。」
エリーはリースに言われるまま右手を差し出す。するとリースは先ほどまでメンテナンスしていた機械をエリーの右手に装着していく。
「火薬による爆発推力を採用した対吸血鬼用パイルバンカー。第一号完成だよ。」
「お、思ってたより重ぇな。」
「どうしてもね爆破の衝撃に耐えられる素材を使ってる関係上、重量はかなり重くなっちゃった。でも威力は保証するよ。」
そう言うとリースは近くに立てかけてあった分厚い金属の板をエリーに見せた。その金属の板の中心には大きな風穴があいている。
「これは最新鋭の戦車の装甲を再現した金属板なんだけど、それにかかればこの通りアッサリ貫通さ。」
「マグナムなんかとは比べ物にならねぇなこの威力は……。」
「ただ、射程距離はほぼ0m。密着状態じゃないとこの威力は発揮できないよ。それに連続使用は3回までしかできない。それ以上は部品と、使用者の手が壊れちゃう。」
「3回もチャンスがあれば十分。むしろ多すぎるぐらいだ。」
「少しでも保険は多いほうがいいかなと思ってね。使用回数を一回きりに絞ればまだまだ軽量化はできるよ。」
「ん、まぁとりあえず今回はこれでいいわ。ちなみに試しに使ってみてもいいか?」
「当たり前だけどシューティングレンジでやってね。ここじゃいろんなものが吹き飛んじゃうよ。」
そしてシューティングレンジへと移動してきた二人。リースは先ほど穴が開いていた金属板と同じもの持ってくるとその場に固定する。
「それの威力を確かめる前に、まずはこの金属板の耐久度を見てよエリー。」
リースはシューティングレンジに立てかけてある対戦車ライフルを担ぐと、その金属板に向かって構えた。彼女が引き金を引くと、室内に響き渡る轟音とともに巨大な弾丸が金属板に向かって一直線に飛んでいくが、金属板に直撃した瞬間、その弾丸はチュン……と甲高い擦れるような音とともに跳弾し、大幅に威力を削がれて壁に激突し落ちた。
「この通り対戦車ライフルでもビクともしないよ。」
「あぁこんぐらいでちょうどいい。」
エリーはその金属板に歩み寄ると、パイルバンカーを密着させる。そして手元のレバーを勢いよく引く。
それと同時に響く雷が間近に落ちたかのような爆音と、手に襲い掛かる強烈な衝撃。思わずエリーは苦悶の表情を浮かべるが、そんな彼女の眼前では、その威力を現すように銀色に光る杭が金属板を貫通していた。
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