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二節 死に戻りのリベンジ
2-2-4
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エリーの知るシナリオ通りに過ごしていた彼女達だったが、一度変わってしまったシナリオをもとに戻すことはできず、それはすぐにイレギュラーな事態を引き起こした。
「エリー、異常事態だよ。」
「ん?お袋、どうした?」
ソファーに深く腰掛け、煙草を吹かしていたエリーにリースがそう告げた。
「引き渡しに向かったバリーから緊急事態を知らせるサインが送られてきたんだ。確かエリーの話だと生け捕りの場合なら何も問題ないはず……だったよね?」
「あぁ、そのはずだ。」
チラリとエリーが時計に目を向けると、現在の時刻はまだ芦澤カナの引き渡し時刻ではなかった。それにメイ達は先程出ていったばかり……。取引の場所にはまだたどり着いていないはず。
「まだその時間じゃねぇ、移動中に何かあったか。」
エリーは耳掛け式の無線機のスイッチを入れると、メイに向かって語りかけ始めた。
「メイ、無事か?状況はどうなってる?」
『ザザ……ザ━━━━━。』
無線の先から聴こえてくるのはノイズ音ばかり。
「チッ、なにか良くねぇ事が起こったらしいな。お袋、二人を確認できた最後の場所わかるか?」
「サインが送られてきたのはラボを出て少し走ったところだよ。ナビゲートするから向かえるかい?」
「ん。」
エリーはすぐにハンドガンを撃てる状態にすると、バイクに跨ってバリーがサインを送ってきた地点へと急いだ。
サインが送られてきた場所にたどり着くと、そこには二人の乗っていたはずの車が乗り捨てられている。
「この近くか。」
エリーはバイクから降りると、ハンドルを引っ張ってブレードを引っこ抜くと周辺を調べ始めた。
「車は……ボンネットが何かで貫かれてるな。それ以外に特に損傷はねぇ。」
(運転席と助手席のほうに何の痕もねぇし、助手席のドアは開きっぱだ。襲われた後二人はなんとか脱出はできてるみてぇだ。ただ、芦澤カナの姿が見当たらねぇ。)
『エリー、何か見つけられたかい?』
「二人が乗ってた車がある。二人はなんとか脱出できてるみてぇだが……。」
『わかった。それじゃ引き続き周囲の捜索を…………。』
と、リースがまだ話している最中だった。
タタン……!!
「っ!!お袋銃声だ。」
一言報告すると同時にエリーは銃声のする方向へと走り始める。
そしてたどり着いた先は……。
「ここは…………。」
銃声が聞こえた場所、それはエリーが初めてローブの吸血鬼と接敵し、ヴラドに殺されたあの廃工場の中。
「嫌な予感がビンビンしやがる。生きてろよ、メイ、バリー!!」
苦い記憶を噛み潰し、エリーは廃工場の中へと入る。すると暗がりの中に一人の人影を確認した。
それはエリーの接近に気がつくと、彼女の方を向いて歪に表情を歪ませた。
「アハァ、やっとキタァ……。」
明らかに常人とは思えない狂った紅い瞳……それをエリーに向けながら、男は長い白髪を振り乱す。
「テメェ、二人はどうした?」
「二人?二人………………アァ!!さっきまで遊んでたヤツだナァ?アイツ等と楽しく遊んでたのに、この中に隠れちゃったんだよナァ~。ま、もっと楽しそうなのがキタからイイケド。」
ケラケラと笑う男からはエリーがかつて見たことがないほど狂気が溢れ出している。
「まずはなにスル?鬼ごっこ?それともかくれんぼ?それとも……。」
楽しそうに子供の遊戯を並べていた男は、一瞬でエリーとの距離を詰める。
「それとも、戦争ゴッコがイイ?」
「あぁ、そっちのがよっぽど楽しいと思うぜ?」
近づいてきた男へとエリーは容赦なくブレードを振るう。
「アァッ!!危ない危ない、それ嫌いダ。」
超反応でブレードを避けると、少し距離を取って男はエリーの手にあるブレードを指さして言った。
「これが嫌い……ねぇ、まぁ薄々わかってはいたが……テメェも吸血鬼だな?」
「大正解~!その通りダヨ、僕は吸血鬼…………あれ?吸血鬼…………アッ、忘れてタ!!」
すると、男は工場の隅に乱雑に投げ捨てられていた芦澤カナの首根っこを掴む。
「うぅ。」
「今日の目的はコイツ!!ホントはまだまだ遊びたいケド、帰らなくちゃ、怒られルゥ!!」
「っ!!待てッ!!」
真っ赤な翼を背中から生やして飛び上がる男へとエリーはハンドガンを撃つ。それをマトモに喰らいながらも男は上からエリーに向かって語りかけた。
「またネ!」
そして目にも止まらぬ速度で男は芦澤カナを持ってどこかへと消えてしまう。
「クソッ、おいバリー、メイ無事か!!」
「エリー!!!!」
脅威がなくなったことを確認すると、廃材の裏からメイが飛び出してくる。
「うぅ~怖かったぁ……。」
「無事で安心したぜ。」
「おいおい、俺の心配はないのかぁ?」
「どうせ大丈夫だと思ってたぜ。」
「キツイぜそりゃ。」
二人の安全を確保した後、エリーはリースに無線で連絡をいれる。
「お袋、二人は無事だ。ただ……芦澤カナは連れ去られた。」
『オッケー、ひとまず戻ってきなよ。状況を少し整理しよう。』
「あぁ。」
エリーは二人を連れてリースのラボへと引き返すのだった。
「エリー、異常事態だよ。」
「ん?お袋、どうした?」
ソファーに深く腰掛け、煙草を吹かしていたエリーにリースがそう告げた。
「引き渡しに向かったバリーから緊急事態を知らせるサインが送られてきたんだ。確かエリーの話だと生け捕りの場合なら何も問題ないはず……だったよね?」
「あぁ、そのはずだ。」
チラリとエリーが時計に目を向けると、現在の時刻はまだ芦澤カナの引き渡し時刻ではなかった。それにメイ達は先程出ていったばかり……。取引の場所にはまだたどり着いていないはず。
「まだその時間じゃねぇ、移動中に何かあったか。」
エリーは耳掛け式の無線機のスイッチを入れると、メイに向かって語りかけ始めた。
「メイ、無事か?状況はどうなってる?」
『ザザ……ザ━━━━━。』
無線の先から聴こえてくるのはノイズ音ばかり。
「チッ、なにか良くねぇ事が起こったらしいな。お袋、二人を確認できた最後の場所わかるか?」
「サインが送られてきたのはラボを出て少し走ったところだよ。ナビゲートするから向かえるかい?」
「ん。」
エリーはすぐにハンドガンを撃てる状態にすると、バイクに跨ってバリーがサインを送ってきた地点へと急いだ。
サインが送られてきた場所にたどり着くと、そこには二人の乗っていたはずの車が乗り捨てられている。
「この近くか。」
エリーはバイクから降りると、ハンドルを引っ張ってブレードを引っこ抜くと周辺を調べ始めた。
「車は……ボンネットが何かで貫かれてるな。それ以外に特に損傷はねぇ。」
(運転席と助手席のほうに何の痕もねぇし、助手席のドアは開きっぱだ。襲われた後二人はなんとか脱出はできてるみてぇだ。ただ、芦澤カナの姿が見当たらねぇ。)
『エリー、何か見つけられたかい?』
「二人が乗ってた車がある。二人はなんとか脱出できてるみてぇだが……。」
『わかった。それじゃ引き続き周囲の捜索を…………。』
と、リースがまだ話している最中だった。
タタン……!!
「っ!!お袋銃声だ。」
一言報告すると同時にエリーは銃声のする方向へと走り始める。
そしてたどり着いた先は……。
「ここは…………。」
銃声が聞こえた場所、それはエリーが初めてローブの吸血鬼と接敵し、ヴラドに殺されたあの廃工場の中。
「嫌な予感がビンビンしやがる。生きてろよ、メイ、バリー!!」
苦い記憶を噛み潰し、エリーは廃工場の中へと入る。すると暗がりの中に一人の人影を確認した。
それはエリーの接近に気がつくと、彼女の方を向いて歪に表情を歪ませた。
「アハァ、やっとキタァ……。」
明らかに常人とは思えない狂った紅い瞳……それをエリーに向けながら、男は長い白髪を振り乱す。
「テメェ、二人はどうした?」
「二人?二人………………アァ!!さっきまで遊んでたヤツだナァ?アイツ等と楽しく遊んでたのに、この中に隠れちゃったんだよナァ~。ま、もっと楽しそうなのがキタからイイケド。」
ケラケラと笑う男からはエリーがかつて見たことがないほど狂気が溢れ出している。
「まずはなにスル?鬼ごっこ?それともかくれんぼ?それとも……。」
楽しそうに子供の遊戯を並べていた男は、一瞬でエリーとの距離を詰める。
「それとも、戦争ゴッコがイイ?」
「あぁ、そっちのがよっぽど楽しいと思うぜ?」
近づいてきた男へとエリーは容赦なくブレードを振るう。
「アァッ!!危ない危ない、それ嫌いダ。」
超反応でブレードを避けると、少し距離を取って男はエリーの手にあるブレードを指さして言った。
「これが嫌い……ねぇ、まぁ薄々わかってはいたが……テメェも吸血鬼だな?」
「大正解~!その通りダヨ、僕は吸血鬼…………あれ?吸血鬼…………アッ、忘れてタ!!」
すると、男は工場の隅に乱雑に投げ捨てられていた芦澤カナの首根っこを掴む。
「うぅ。」
「今日の目的はコイツ!!ホントはまだまだ遊びたいケド、帰らなくちゃ、怒られルゥ!!」
「っ!!待てッ!!」
真っ赤な翼を背中から生やして飛び上がる男へとエリーはハンドガンを撃つ。それをマトモに喰らいながらも男は上からエリーに向かって語りかけた。
「またネ!」
そして目にも止まらぬ速度で男は芦澤カナを持ってどこかへと消えてしまう。
「クソッ、おいバリー、メイ無事か!!」
「エリー!!!!」
脅威がなくなったことを確認すると、廃材の裏からメイが飛び出してくる。
「うぅ~怖かったぁ……。」
「無事で安心したぜ。」
「おいおい、俺の心配はないのかぁ?」
「どうせ大丈夫だと思ってたぜ。」
「キツイぜそりゃ。」
二人の安全を確保した後、エリーはリースに無線で連絡をいれる。
「お袋、二人は無事だ。ただ……芦澤カナは連れ去られた。」
『オッケー、ひとまず戻ってきなよ。状況を少し整理しよう。』
「あぁ。」
エリーは二人を連れてリースのラボへと引き返すのだった。
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