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第二章 一節 不死身の傭兵
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しおりを挟む蘇ったエリーは筋書き通り日本にたどり着くと、そこからバリーの運転でラボへと足を運ぶ。
「久しぶりの再会だ、姉さんも張り切って待ってるぜエリー?」
「はっ、ったくよ……。」
前回と一言一句違わないバリーの言葉。それを聞き流しながらエリーはラボの中に足を踏み入れる。すると、三本の投げナイフが彼女へと向かって放たれた。
(狙う急所まで同じか。この分なら……。)
エリーは二本のナイフを弾き、細工されたナイフのみをキャッチすると、彼女はそのナイフを投げられた方向へと向かって投げ返す。
一拍おいてそのナイフから煙幕が放出された。
その煙幕の中に向かってエリーはハンドガンの銃口を向けると、早撃ちでほぼ同時に三発の銃弾を放つ。
(さぁ、来いよお袋。)
すると、エリーの狙い通りの場所からリースが飛び出してくる。その表情はとても嬉しそうでもあり、楽しそうでもあった。
「エリー、やるようになったねぇ!!」
「そっから出てくるのを待ってたぜ。」
姿を現したリースへエリーは再び弾丸を放つ。
「あははっ!!」
それを嘲るようにリースは至近距離ながらも紙一重で躱しながら、エリーへの距離を詰めていく。
「この距離ならもう銃は使えないね?」
懐間近まで接近したリースは近距離戦に持ち込もうとする。
「悪いが、お袋の土俵で闘るつもりはねぇ。」
エリーはハンドガンにセーフティーをかけると引き金を強く引き、それを頭上へと放り投げバックステップした。それと同時にエリーのハンドガンから催涙成分入りの煙幕が放出される。
「ありゃ、これは予想外。」
リースは口元を白衣の袖で覆いながら煙幕に飲まれないようにバックステップした。そしてリースの目の前に煙幕のカーテンが出来上がると同時、ゴーグルをかけたエリーが煙幕の中から姿を現す。
「ダンスならこの中でやってやんよ!!」
「おぉ!!」
エリーはリースの腕を引っ張ると煙幕の中に連れ込んだ。
「けほっ、なるほどそういう狙いだったわけか。こりゃまんまとやられたね。」
やれやれと溜息を吐いたリースの後頭部にエリーが煙幕を放出し終えたハンドガンの銃口を突き付けた。
「チェックメイトだ。」
「あはは、すごい成長ぶりだよエリー。こっちの手がぜ~んぶ潰されちゃった。」
両手を上にあげながらリースは苦笑いする。
「まるで全部知っていた……ような反応だったよ。」
「これでもアンタの娘だ。お袋の考えてることぐれぇわかるぜ。」
「嬉しいこと言ってくれるなぁ~。お母さん感動で涙出てきちゃう。」
「……それ催涙効果で涙出てるだけだろ?」
「あはは、そうかも?それで、いつ私の頭から銃口を外してくれるのかな?」
「アンタが負けを認めるまで外すつもりはねぇぜ。」
「ありゃりゃ、それは残念。」
その次の瞬間、リースが高速で体を捻ると、エリーの持つハンドガンを風を切る音とともに何かが通り抜けていく。
「なっ!?」
直後エリーのハンドガンの銃身が床に落ちた。
そして何が起こったのか理解する前にエリーの眼前に鈍色に光るブレードの切っ先が突き付けられた。
「さすがにここまでは読めなかったみたいだねエリー?」
「服の内側にそんなもん忍ばせてんのかよ。」
エリーに突き付けられているブレードはリースの白衣の袖から伸びていた。
「ちなみにこっちからでも出せるよ?」
見せつけるようにもう片方の袖からもブレードを生やして見せるリース。
すっかり立場は逆転し、今度はエリーが手を挙げた。
「はぁ、アタシの負けだ。」
「そんなに悔しそうにしなくてもいいんじゃない?いい線いってたよエリー♪」
にっこりとリースは微笑むと、袖のブレードをしまい、メイたちのことを迎えに行った。そんな彼女の背中を眺めエリーは溜息を吐く。
(まだ勝てねぇか……。)
それから数日後、エリーはターゲットである芦澤カナの確保に動いていた。ターゲットの行動は前回とまったく同じで、駅に向かう途中で路地裏へと入っていく。
「カ……ッ、助け………。」
被害者も同じ男。同じ断末魔を上げて死んだ。
その顛末を眺めていたエリーにターゲットが気が付いた。
「あ!見られちゃったぁ~……。私の食事シーンに出くわすなんて、あなたもツイてないなぁ~。」
「ツイてねぇ……か。そいつはテメェだけだ。アタシは最高にツイてるぜ?」
そう言って笑ったエリーの両手にはバイクに備え付けられていた銀製のブレードが握られている。
「テメェで試したいことがあったんだ。」
ターゲットとの距離を一気に詰めると、エリーはブレードである場所を狙う。
(場所は心臓の少し横……ここだ!!)
そしてエリーは芦澤カナの胸にブレードを容赦なく突き刺した。
「あ……あ、い、痛……い?なんで冷た、い……。嫌、私はまだ……。」
生に執着するような言葉を遺して芦澤カナは崩れ落ちる。
ターゲットを見下ろすとエリーはメイに無線をつなぐ。
「やっぱ生け捕りは無理だったわ。」
そして彼女は芦澤カナの遺体を死体袋に詰めるとラボに戻るのだった。
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