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二節 交錯する思惑
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エリーがリースから対吸血鬼用の装備を受け取ってから数日後。
メイが購入者リストに記載されていた名簿から一人の人物の所在を明らかにした。
そしてエリーとメイの二人はさっそく作戦会議を始めるのだった。
「それじゃあさっそく本題に入るけど、今回身元が割れたのは購入者リストで暗号で身元を隠してた人物の一人よ。」
「お、そっちの時間かかりそうなやつからいったのか。」
「面倒くさいのから潰していったほうが後々楽だからね。これ事前に洗い出せた情報をまとめてあるわ、目を通しながら聞いて。」
メイはエリーに割り出した人物についての情報が記載された紙を手渡した。
「本名は松本ヨシキ。年齢は32歳。職業はプログラマー。住所は東京都港区六本木にある高層マンション。」
「プログラマーねぇ、だから暗号化できたのか。」
「まぁ技術は私のほうが上だけどね。」
「はいはい、わかってる。」
エリーが資料に目を通していると、松本ヨシキに関する顔写真がたくさん並べられていることに気が付く。そしてその顔写真のどれもが少し違うことも。
「ん?こいつ……整形してんのか?」
「そう、今回一番の問題がそれなのよ。一応かき集められた顔写真がそこにアップロードされた日付と一緒に貼ってあるんだけど、短期間でかなり顔のパーツを変えてるみたいなのよね。」
「にしては手術の痕も全く見当たらねぇ。最近の整形技術ってやつは進化してんなぁ。」
「それなんだけど、この松本ヨシキには有名どころの美容整形の病院への通院記録がないのよ。末端の病院にもね。」
「こんなに顔変えてんのにか?」
「えぇ、闇医者の線も洗ったけど、わざわざ美容整形を闇医者でやるメリットがないのよね。」
「ふん……なんかきな臭ぇな。」
「ね、なにか芦澤カナの時みたいに変な超能力的なものを持ってるかもしれないわ。そこも警戒よエリー。」
「わかってる。それで、そいつの行動パターンは割れてるのか?」
「もちろん!資料の二ページ目を見て頂戴。」
促されるままエリーは二ページ目を開くと、そこには松本ヨシキの一日の行動パターンが事細かに記載されていた。
「仕掛けるチャンス的には……仕事帰りが狙えそうだな。」
「えぇ、彼は仕事帰りに必ず行きつけの居酒屋に寄るみたい。そのあとがチャンスね。」
「ん、わかった。ほんなら今日の夜ちょっくら行ってくるわ。」
「こっちでも随時サポートするけど、気を付けてねエリー?」
「任しとけ、吸血鬼とやるのは二回目だからな。もう油断はしねぇ。」
それから二人は綿密に作戦を練ると、二人目の吸血鬼松本ヨシキの確保に動くのだった。
日は傾いて夜になるとエリーは松本ヨシキが利用するという居酒屋で張り込みをしていた。そんな彼女にメイから無線が入る。
『エリー、もうすぐターゲットが現れるわ。』
「おう、了解。」
エリーはノンアルコールビールを口にしながらターゲットが来るのを警戒していた。すると、居酒屋の入り口が開き、そこから松本ヨシキらしき人物が現れた。
「ん?」
一瞬顔を視界にとらえたエリーはある違和感に気が付いた。
(また顔が変わってやがる。)
エリーはここに来る前のブリーフィングで監視カメラ越しにリアルタイムで松本ヨシキの顔を確認していた。
しかし、今現れた彼の顔はまた少しパーツが変わっているのだ。
「メイ、ここに来るまでのあいつの足取りは?」
『仕事を終えてからそこに直行してるわ。あ、でも駅から出てくるのが少し遅かったから、そこでトイレに行ってたかも。』
「……あいつが仕事終わってからそっちで確認した顔はどうだった?」
『今朝と変わらなかったけど?まさか今顔が変わってる?』
「あぁ、また変わってやがる。おそらくあれがあいつの能力だとみて間違いなさそうだ。動きがあったらまた連絡する。」
『了解。』
メイと無線を切り、エリーはちびちびとノンアルコールビールを飲みながらターゲットが動き出すのを待つ。
そして、ターゲットが二杯のハイボールと少量の食事を食べ終えると彼は席を立ち会計を始めた。
「メイ、ターゲットが立った。動くぜ。」
『了解、周囲の監視カメラはもうこっちで掌握してるからいつでもいいわよ。』
「オーケー。」
ターゲットに続いてエリーも席を立つと、ぱっぱと会計を終え、ターゲットの後をつける。そして路地でターゲットと二人きりになった瞬間エリーはメイに合図を送った。
「コンタクト。」
その合図と同時に周辺の監視カメラの映像が偽のものに切り替わる。
「ふっ。」
エリーは極小の足音でターゲットの背中に一気に近づくと、松本ヨシキの首を締めあげた。
「かひゅっ!?」
「動くな。」
エリーはドスのきいた声でターゲットを脅したが、ターゲットはにやりと口角を上げると凄まじい力でエリーの拘束を抜け出した。
「ん、やっぱりな。」
「かはっ、急になにするんですか。警察呼びますよ?」
「警察呼んでもいいが、地獄を見るのはてめぇだぜ?なぁ、吸血鬼さん?」
「っ!!」
エリーの言葉に明らかにターゲットの松本ヨシキは動揺した。
「コロコロ顔を変えてるのも吸血鬼の力ってやつだろ?」
「……ちょうどいい。そろそろ血を摂取しなければいけなかったんだ。何人たりとも僕の正体を知るものを生かしてはおけない。ここで僕の養分になってもらおうか!!」
すると松本ヨシキの腕が異様な音を立て、異形の形へと変形していく。
メイが購入者リストに記載されていた名簿から一人の人物の所在を明らかにした。
そしてエリーとメイの二人はさっそく作戦会議を始めるのだった。
「それじゃあさっそく本題に入るけど、今回身元が割れたのは購入者リストで暗号で身元を隠してた人物の一人よ。」
「お、そっちの時間かかりそうなやつからいったのか。」
「面倒くさいのから潰していったほうが後々楽だからね。これ事前に洗い出せた情報をまとめてあるわ、目を通しながら聞いて。」
メイはエリーに割り出した人物についての情報が記載された紙を手渡した。
「本名は松本ヨシキ。年齢は32歳。職業はプログラマー。住所は東京都港区六本木にある高層マンション。」
「プログラマーねぇ、だから暗号化できたのか。」
「まぁ技術は私のほうが上だけどね。」
「はいはい、わかってる。」
エリーが資料に目を通していると、松本ヨシキに関する顔写真がたくさん並べられていることに気が付く。そしてその顔写真のどれもが少し違うことも。
「ん?こいつ……整形してんのか?」
「そう、今回一番の問題がそれなのよ。一応かき集められた顔写真がそこにアップロードされた日付と一緒に貼ってあるんだけど、短期間でかなり顔のパーツを変えてるみたいなのよね。」
「にしては手術の痕も全く見当たらねぇ。最近の整形技術ってやつは進化してんなぁ。」
「それなんだけど、この松本ヨシキには有名どころの美容整形の病院への通院記録がないのよ。末端の病院にもね。」
「こんなに顔変えてんのにか?」
「えぇ、闇医者の線も洗ったけど、わざわざ美容整形を闇医者でやるメリットがないのよね。」
「ふん……なんかきな臭ぇな。」
「ね、なにか芦澤カナの時みたいに変な超能力的なものを持ってるかもしれないわ。そこも警戒よエリー。」
「わかってる。それで、そいつの行動パターンは割れてるのか?」
「もちろん!資料の二ページ目を見て頂戴。」
促されるままエリーは二ページ目を開くと、そこには松本ヨシキの一日の行動パターンが事細かに記載されていた。
「仕掛けるチャンス的には……仕事帰りが狙えそうだな。」
「えぇ、彼は仕事帰りに必ず行きつけの居酒屋に寄るみたい。そのあとがチャンスね。」
「ん、わかった。ほんなら今日の夜ちょっくら行ってくるわ。」
「こっちでも随時サポートするけど、気を付けてねエリー?」
「任しとけ、吸血鬼とやるのは二回目だからな。もう油断はしねぇ。」
それから二人は綿密に作戦を練ると、二人目の吸血鬼松本ヨシキの確保に動くのだった。
日は傾いて夜になるとエリーは松本ヨシキが利用するという居酒屋で張り込みをしていた。そんな彼女にメイから無線が入る。
『エリー、もうすぐターゲットが現れるわ。』
「おう、了解。」
エリーはノンアルコールビールを口にしながらターゲットが来るのを警戒していた。すると、居酒屋の入り口が開き、そこから松本ヨシキらしき人物が現れた。
「ん?」
一瞬顔を視界にとらえたエリーはある違和感に気が付いた。
(また顔が変わってやがる。)
エリーはここに来る前のブリーフィングで監視カメラ越しにリアルタイムで松本ヨシキの顔を確認していた。
しかし、今現れた彼の顔はまた少しパーツが変わっているのだ。
「メイ、ここに来るまでのあいつの足取りは?」
『仕事を終えてからそこに直行してるわ。あ、でも駅から出てくるのが少し遅かったから、そこでトイレに行ってたかも。』
「……あいつが仕事終わってからそっちで確認した顔はどうだった?」
『今朝と変わらなかったけど?まさか今顔が変わってる?』
「あぁ、また変わってやがる。おそらくあれがあいつの能力だとみて間違いなさそうだ。動きがあったらまた連絡する。」
『了解。』
メイと無線を切り、エリーはちびちびとノンアルコールビールを飲みながらターゲットが動き出すのを待つ。
そして、ターゲットが二杯のハイボールと少量の食事を食べ終えると彼は席を立ち会計を始めた。
「メイ、ターゲットが立った。動くぜ。」
『了解、周囲の監視カメラはもうこっちで掌握してるからいつでもいいわよ。』
「オーケー。」
ターゲットに続いてエリーも席を立つと、ぱっぱと会計を終え、ターゲットの後をつける。そして路地でターゲットと二人きりになった瞬間エリーはメイに合図を送った。
「コンタクト。」
その合図と同時に周辺の監視カメラの映像が偽のものに切り替わる。
「ふっ。」
エリーは極小の足音でターゲットの背中に一気に近づくと、松本ヨシキの首を締めあげた。
「かひゅっ!?」
「動くな。」
エリーはドスのきいた声でターゲットを脅したが、ターゲットはにやりと口角を上げると凄まじい力でエリーの拘束を抜け出した。
「ん、やっぱりな。」
「かはっ、急になにするんですか。警察呼びますよ?」
「警察呼んでもいいが、地獄を見るのはてめぇだぜ?なぁ、吸血鬼さん?」
「っ!!」
エリーの言葉に明らかにターゲットの松本ヨシキは動揺した。
「コロコロ顔を変えてるのも吸血鬼の力ってやつだろ?」
「……ちょうどいい。そろそろ血を摂取しなければいけなかったんだ。何人たりとも僕の正体を知るものを生かしてはおけない。ここで僕の養分になってもらおうか!!」
すると松本ヨシキの腕が異様な音を立て、異形の形へと変形していく。
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