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第一章 一節 二人の傭兵
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目に光を取り戻した芦澤カナは人間ならざる力でエリーの首を鷲掴みにすると片手で自分の首に刺さっていたナイフを引き抜いていく。
「かっぐッ……。」
「あぁ~、痛かったぁ。一瞬頭がバチって白くなったし。」
「テメェ……なんで生きてっ。」
「普通の人間だったら即死だったと思うよ?でも私……吸血鬼だからさぁっ!!」
エリーの体を簡単に片手で放り投げ、芦澤カナは笑う。
投げられたエリーはいろいろなものにぶつかりながらも、最終的に自分が乗ってきたバイクに勢いよく叩きつけられると、口元から血を流す。
「ぐっ……。」
(油断した。完全に殺したと思ったんだがなぁ。今ので肋骨二本ぐらいはやられた。こんなことなら対物ライフルでも担いでくるんだったぜ。一撃で頭吹っ飛ばしてやれるのによ。)
「武器はもうねぇ。マジでこんなことならもっと武装してくるんだったな。」
軽装備で来ていたエリーの手にはもう武器がない。ハンドガンもナイフも使ってしまった。万事休すかと思われた時、自分が背中を預けていたバイクにある機能があったことを思い出す。
「そういや……こいつがまだあったな。」
エリーは立ち上がると自分のバイクのハンドルを強く引く。すると鈍色の刃が現れた。
「お袋、ありがたく使わせてもらうぜ。」
両手にそのブレードを構えるとほぼ同時、今度は両手に真っ赤な日本刀のようなものを持って芦澤カナが向かってくる。
「ふぅ……。」
呼吸を整えるとエリーは地面すれすれまで体勢を低くして地面を蹴った。そしてすれ違いざまに両手のブレードで芦澤カナの両足の腱を断ち切った。その瞬間今までとは明らかに違う反応を芦澤カナが見せる。
「いぎっ!!??」
「ん?」
今まであまり痛みに反応を示さなかった芦澤カナが今初めて痛みに顔をゆがめ、斬られた足を押さえてうずくまったのだ。
「いひっい、いだい……いだいぃ。」
「そういうお芝居はいらねぇぜ。吸血鬼さんよ。」
「ま、まっで……!!」
制止を呼びかけようと芦澤カナが伸ばした手は、エリーの握るブレードによってあっさりと両断されてしまう。
「あ゛っ。」
「どういう理屈かは知らねぇがこれで切られるとホントに痛ぇみたいだな。」
冷静に分析しながらエリーは冷徹な目で芦澤カナのことを見下ろした。
「悪いなこれがアタシの仕事だ。」
そして一思いにエリーは芦澤カナの首をブレードで刎ね飛ばす。すると今度はぷっつりと糸が切れた人形のように首を切断された芦澤カナの体は地面に倒れる。
「お袋、終わったぜ。」
『ん、結構結構。それじゃ手筈通りラボに運び入れてくれる?あ、ばらばらにした手とかもちゃんと全部持ってくるんだよ?』
「はいはい。」
無線を切るとエリーは芦澤カナの体を死体袋に包み、リース達が待つラボへと帰路につくのだった。
時は少し流れてリースのラボにて。
「いでででっ!!ちょ、お袋もうちょい優しくできねぇのかよ!?」
「はいはいうるさーい。もうちょっとで終わるから大人しくしてなさい。」
リースはエリーの折れた肋骨を治療するため彼女の胸部にぐるぐるとバストバンドを巻き付けていく。そしてバストバンドの装着が終わると、バシッとエリーの背中を手で叩く。
「い゛っでぇ!?」
「はいお終い。ま、ちょっと安静にしてなさい。」
「ぜってぇ最後のいらなかっただろ。」
「お母さんの愛ってやつよ?」
そういって投げキッスをするリースにエリーは体を震わせた。
「寒気がするぜ。」
「それだけ軽口を叩けるなら大丈夫そうだね。」
エリーの治療を終えるとリースは芦澤カナの遺体に向き合った。
「さてとこの子からはいろいろと情報を引き出さないとね。一見死んでるように見えるけど……。」
すると、リースは芦澤カナの胸元に手を当てた。するとリースの手に心臓の鼓動が伝わってくる。
「胴と首を切り離されても心臓が動いてる。もしかして……首くっつけたら生き返るかな?」
そう言ってリースは芦澤カナの首を持ち上げると切断された胴体とくっつけた。それと同時に今まで閉じていた芦澤カナの瞳がゆっくりと開かれる。
「こ、ここはどこ?」
「おっ、生き返った!ここかい?そうだねぇ、キミにとってはまぁ……地獄の入口的な場所かな?」
「っ、殺してや……。」
ふざけたように言ったリースの言葉に腹を立てたのか芦澤カナは残っている左手でリースに手を出そうとするが……。
「まぁまぁ、そんなにカッカしないの。」
リースによって口元を鷲掴みにされた芦澤カナ。するとリースは彼女の開いた口の中へと何か薬品を流し込んだ。
「ごぼっ!?~~~っ!?」
「うん、いい飲みっぷりだ。そのまま全部飲み干してね~。」
淡々と話しながら、リースは液体をすべて無理やり流し込んだ。すると、すぐに芦澤カナの体に異変が表れ始めた。
「か、体が動かな……。」
「強力な麻痺毒だよ。ただの人間に使ったらまぁすぐ死んじゃうけど、さすがは吸血鬼耐えるね。」
「こ、こんなものっ!!」
無理やり体を動かそうとするが、芦澤カナの体は指先が少し動く程度で全く機能していない。
「さ、大人しくなったところで実験……コホン!!もとい楽しい尋問を始めよう。」
リースはにこりと悪魔的に微笑むと、そう言い放った。
「かっぐッ……。」
「あぁ~、痛かったぁ。一瞬頭がバチって白くなったし。」
「テメェ……なんで生きてっ。」
「普通の人間だったら即死だったと思うよ?でも私……吸血鬼だからさぁっ!!」
エリーの体を簡単に片手で放り投げ、芦澤カナは笑う。
投げられたエリーはいろいろなものにぶつかりながらも、最終的に自分が乗ってきたバイクに勢いよく叩きつけられると、口元から血を流す。
「ぐっ……。」
(油断した。完全に殺したと思ったんだがなぁ。今ので肋骨二本ぐらいはやられた。こんなことなら対物ライフルでも担いでくるんだったぜ。一撃で頭吹っ飛ばしてやれるのによ。)
「武器はもうねぇ。マジでこんなことならもっと武装してくるんだったな。」
軽装備で来ていたエリーの手にはもう武器がない。ハンドガンもナイフも使ってしまった。万事休すかと思われた時、自分が背中を預けていたバイクにある機能があったことを思い出す。
「そういや……こいつがまだあったな。」
エリーは立ち上がると自分のバイクのハンドルを強く引く。すると鈍色の刃が現れた。
「お袋、ありがたく使わせてもらうぜ。」
両手にそのブレードを構えるとほぼ同時、今度は両手に真っ赤な日本刀のようなものを持って芦澤カナが向かってくる。
「ふぅ……。」
呼吸を整えるとエリーは地面すれすれまで体勢を低くして地面を蹴った。そしてすれ違いざまに両手のブレードで芦澤カナの両足の腱を断ち切った。その瞬間今までとは明らかに違う反応を芦澤カナが見せる。
「いぎっ!!??」
「ん?」
今まであまり痛みに反応を示さなかった芦澤カナが今初めて痛みに顔をゆがめ、斬られた足を押さえてうずくまったのだ。
「いひっい、いだい……いだいぃ。」
「そういうお芝居はいらねぇぜ。吸血鬼さんよ。」
「ま、まっで……!!」
制止を呼びかけようと芦澤カナが伸ばした手は、エリーの握るブレードによってあっさりと両断されてしまう。
「あ゛っ。」
「どういう理屈かは知らねぇがこれで切られるとホントに痛ぇみたいだな。」
冷静に分析しながらエリーは冷徹な目で芦澤カナのことを見下ろした。
「悪いなこれがアタシの仕事だ。」
そして一思いにエリーは芦澤カナの首をブレードで刎ね飛ばす。すると今度はぷっつりと糸が切れた人形のように首を切断された芦澤カナの体は地面に倒れる。
「お袋、終わったぜ。」
『ん、結構結構。それじゃ手筈通りラボに運び入れてくれる?あ、ばらばらにした手とかもちゃんと全部持ってくるんだよ?』
「はいはい。」
無線を切るとエリーは芦澤カナの体を死体袋に包み、リース達が待つラボへと帰路につくのだった。
時は少し流れてリースのラボにて。
「いでででっ!!ちょ、お袋もうちょい優しくできねぇのかよ!?」
「はいはいうるさーい。もうちょっとで終わるから大人しくしてなさい。」
リースはエリーの折れた肋骨を治療するため彼女の胸部にぐるぐるとバストバンドを巻き付けていく。そしてバストバンドの装着が終わると、バシッとエリーの背中を手で叩く。
「い゛っでぇ!?」
「はいお終い。ま、ちょっと安静にしてなさい。」
「ぜってぇ最後のいらなかっただろ。」
「お母さんの愛ってやつよ?」
そういって投げキッスをするリースにエリーは体を震わせた。
「寒気がするぜ。」
「それだけ軽口を叩けるなら大丈夫そうだね。」
エリーの治療を終えるとリースは芦澤カナの遺体に向き合った。
「さてとこの子からはいろいろと情報を引き出さないとね。一見死んでるように見えるけど……。」
すると、リースは芦澤カナの胸元に手を当てた。するとリースの手に心臓の鼓動が伝わってくる。
「胴と首を切り離されても心臓が動いてる。もしかして……首くっつけたら生き返るかな?」
そう言ってリースは芦澤カナの首を持ち上げると切断された胴体とくっつけた。それと同時に今まで閉じていた芦澤カナの瞳がゆっくりと開かれる。
「こ、ここはどこ?」
「おっ、生き返った!ここかい?そうだねぇ、キミにとってはまぁ……地獄の入口的な場所かな?」
「っ、殺してや……。」
ふざけたように言ったリースの言葉に腹を立てたのか芦澤カナは残っている左手でリースに手を出そうとするが……。
「まぁまぁ、そんなにカッカしないの。」
リースによって口元を鷲掴みにされた芦澤カナ。するとリースは彼女の開いた口の中へと何か薬品を流し込んだ。
「ごぼっ!?~~~っ!?」
「うん、いい飲みっぷりだ。そのまま全部飲み干してね~。」
淡々と話しながら、リースは液体をすべて無理やり流し込んだ。すると、すぐに芦澤カナの体に異変が表れ始めた。
「か、体が動かな……。」
「強力な麻痺毒だよ。ただの人間に使ったらまぁすぐ死んじゃうけど、さすがは吸血鬼耐えるね。」
「こ、こんなものっ!!」
無理やり体を動かそうとするが、芦澤カナの体は指先が少し動く程度で全く機能していない。
「さ、大人しくなったところで実験……コホン!!もとい楽しい尋問を始めよう。」
リースはにこりと悪魔的に微笑むと、そう言い放った。
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