転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
1,025 / 1,052
第五章

母エルフ

しおりを挟む

 翌朝、少し早めに食材を運んできてくれたリコと共に今日買ってもらう食材の整理を進めていると、ユリを筆頭に続々と立候補してくれたエルフの社員たちが集まってきた。

「みんなおはよう。」

「「「おはようございま~す!!」」」

「ん、みんな元気そうで何よりだ。じゃ、これから獣人族の国に行くんだけど、その前に獣人族の言葉を話せる人はどのぐらいいる?」

 すると俺の予想に反して全員が手を挙げた。

「おっ、みんな話せるのか。それなら何の問題もないな。」

 みんな話せるなら子供たちともすぐに打ち解けてくれるだろう。あともう一つある事項を確認しておこう。

「もう一つ確認したいことがあるんだけど、この中に育児経験がある人は?」

 すると五人の中で唯一一人だけ手を挙げた。

「私だけ……ですね。」

 彼女は自分の娘と一緒に俺の会社に入社した、ボタンって名前のお母さんエルフだ。ちょうど今回の立候補者の中に、娘さんのモミジもいる。娘さんといっても、ちゃんと成人してるエルフらしいから、俺よりもはるかに年上なんだよな。

「いや、ボタンだけでもありがたいよ。いないよりも遥かに良い。」

「しゃちょ~う、お母さんめっちゃ怖いけど大丈夫~?」

 にやにやと自分の母親のボタンの横っ腹をつつきながら、モミジがそう言った。すると彼女の頭に拳骨が落ちる。

「いた~いっ!!」

「自分の娘に厳しくするのは当然でしょう。」

「ふふ、ボタンの言うとおりだな。っと、それじゃあボタンはみんなに子供に対する接し方のお手本を見せてあげてほしい。これからたくさんの獣人族の子供と会うことになるからな。」

「承りました。」

「よし、確認したいことは確認し終わったから、そろそろ向かおう。」

 俺は大人数で移動する用の転送の結晶に魔力を込めて、獣人族の国へと移動した。そして、みんなを連れて王宮へと向かう。するとそこではシンと一緒に、見覚えのある羊の獣人がこちらを待っていた。

「待たせちゃったみたいだな。」

「いや、我らも今しがた準備を終えたところだ。ではメーネル会計を頼む。」

「承知しました我が王。ではヒイラギ殿請求書を頂けませんか?」

「はいよ。」

 彼に請求書を手渡すと、すぐにこちらにお金の入った袋が帰ってきた。

「請求書に記載されていた金額ぴったり封入いたしました。ご確認ください。」

「わかった。」

 大丈夫だとは思うが、念のため確認してみるとしっかりと請求書通りの金額が入っていた。

「ん、確かに。」

「では確認も済んだところで、護衛の兵士たちをつけさせます。」

「ありがとう。」

「あとで我も様子を見に行くからなヒイラギ。」

「あぁ、待ってるよ。」

 護衛についてくれた兵士たちに囲まれながら、俺たちは孤児院へと向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...