転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

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第五章

現れたクラーケン

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 海から触手が飛び出してきたと思えば、それはすぐに漁船へと巻きついていく。

「グレイス、しっかり掴まってろよ。」

 上空から一気に降下し、その漁船の上に降り立つと、船員がなんとか触手を退けようとして、銛のようなもので刺そうとしていた。

「おい、船長に伝えてくれ。俺がこの魔物を引き受けるから、早く港に帰れと。」

「あ、あんたはもしかして……。」

「俺のことは良いから、早くしろ。」

 俺は右手にサンダーブレスを纏わせて、その触手を掴んだ。すると、触手が激しくビチビチと暴れ始め、たまらず海の中へと戻っていった。

「ほら、今のうちだ。」

「っ、わ、わかった!!」

 声をかけた船員が、走って船長がいるところへと向かう。それを目で追っていると、船の側面の海面が一気に盛り上がり始めた。

「出てくるか。」

 大きく揺れる船の上から飛び立って、その様子を眺めていると、大波を巻き起こしながら、漁船よりも遥かに大きな巨大イカが海面に現れた。
 そいつは相当怒っているらしく、俺の方にギョロッとした目を向けてくる。

 確か、こいつは言語理解を持っているらしい魔物だってミースが言ってたな。それならこういう手が使えるんじゃないかな。

「やっと姿を現したな。イカ野郎、焼きイカにしてやるからかかってこいよ。」

 そう挑発してやると、やはりこちらの言葉が理解できるようで、怒りをあらわにしながら墨を吐いてきた。

「よっと、それには当たってやれないな。」

 イカの墨は種類にもよるが、めちゃくちゃ濃度の濃いタイプの墨を持ってるイカもいる。このクラーケンの墨はどうかわからないが、汚れたくもないし避けておこう。

「それと、イカ墨を無駄に出すのはやめてくれないか?それも立派な食材なんだが……。」

 自分が食べ物に見られていることに、更に怒ったクラーケンは、巨大な触手で俺のことを捕まえようとしてくる。

 だが、巨大故に動きは遅く避けるのは容易だった。

「ほいっ、ほいっと。」

 ヒラヒラと難なく避けているのが更に癪に障ったらしい、今度は触手の先端から魔法を放とうとしてきた。

「おっ、今度は魔法か。」

 魔法陣から放たれたのは、水のレーザーのような魔法だった。それが全ての触手の先端から放たれているから、避けるのは難しそうだ。

「これはなかなか避けるのは難しいな。なら、一番簡単で安全な方法で行くか。」

 俺はクラーケンの眉間めがけて、一気に降下していく。すると、魔法が自分に当たることを恐れたのか、こちらに魔法は飛んでこなくなった。
 その代わり、俺を食おうとクラーケンが巨大なクチバシをガチガチと鳴らしている。

「食われるのは……。」

 そのクチバシを蹴って、俺は当初の狙い通り奴の眉間の前にたどり着く。

「お前の方だよっ!!」

 そして全力でクラーケンの眉間へ踵落としを叩き込んだ。すると、クラーケンは全身の色が一気に透明になって動かなくなった。

「クラーケンの活け締め……完了っと。」

 さ、後はこいつをマジックバッグにしまって、ミースのところに持っていこう。

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