転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
971 / 1,052
第五章

90点

しおりを挟む

 カルボナーラをみんな分作ってから、俺は師匠の分を持って彼女が幽閉されている場所へと向かった。

「師匠、ご飯持ってきましたよ。」

「おっ!!きたきた~、この時を待ち望んでいたんだ。」

 カルボナーラが運ばれてくると、師匠はクンクンと鼻を鳴らして必死に匂いを嗅ぎ、口元からよだれが零れ落ちそうになっていた。

「言われた通り、分厚く切ったベーコンは表面カリカリに焼いてきましたよ。」

「ふふふ、ありがとう柊。手が動かせれば頭を撫でてやりたかったぞ。」

「もうそんな歳でもないですよ。」

「そうかもしれないな。さ、早くパスタが伸びる前に私に食べさせてくれ。」

 師匠にご飯を食べさせて数日経つから、だんだん慣れてはきたが……この師匠に食べさせてあげる瞬間は、なかなかどうして緊張というか、恥ずかしい気持ちがある。

「それじゃ、口開けてください。」

「あ~んしてと言っても良いんだぞ?」

「それは恥ずかしいので、普通に食べてください。」

「つれないなぁ。ま、良いだろう。」

 ベーコンと玉ねぎとパスタをしっかりとフォークでまとめて、師匠の口に近づけると、飛びつくように師匠はカルボナーラを口にした。

「んむ……うん!!美味いぞ!!90点だな。」

「100点じゃないんですね。」

「だって、もっと勉強すればもっと美味しいものが作れるようになるのだろう?」

「まぁ、それはもちろん。」

「ならば、今100点をつけるのは時期尚早だろう。もっと美味いものが食べれるかもしれないのだからな!!」

「ご尤もですね。」

「ほらほら、私はまだまだ満足していないぞ。どんどん食わせてくれ。」

「さっきみたいに飛びつかないでくださいよ?危ないですからね。」

「ははは、待ちきれなくてな!!あんまり焦らすとまた食いつくかもしれんぞ?」

 そして師匠にカルボナーラを食べさせている途中……後ろからジトッと背中に張り付くような視線を感じた。

「ん?」

 チラリと後ろを振り返ると、格子状になった扉の空気口からドーナとラン、そしてレイの三人が羨ましそうにこちらを、じっと見つめていた。

 その視線に師匠も気づいたようで、悪い笑みを浮かべると、俺にあることをお願いしてくる。

「柊、少し口元にソースがついてしまった。」

「それ、今わざとつけましたよね?……今拭きますね。」

 ナプキンで師匠の口元を拭っていると、後ろの扉の方からバキン!!と何か硬いものが折れる音がした。

 後ろをまた振り返ってみると、さっきまであった格子状の棒が一本もなくなっていて、へし折られたような跡が残っていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

処理中です...