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第五章

勝算は……

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 ちょっとした失敗もありながら、今日もみんなで美味しく夕食を食べ終えた後……俺はカリンの屋敷を訪ねていた。

「で、話とは何だ社長。」

 正面に座るカリンがマンドラ茶を飲みながら、要件を問いかけてくる。

「実は今日俺に会いたいって言ってたあの人は、死の女神の配下だったんですよ。」

「なんだと!?」

「でも安心してください。彼女はこちらに協力的な存在なので。」

「そいつは信用できるのか?」

「大丈夫です。襲撃の日時までしっかりと教えてくれました。」

 俺はカリンに襲撃の日時と場所に書いてある紙を手渡した。それに彼女も目を通したが……首を大きく横に傾げている。

「これは何の文字だ?此方には読めぬ。」

「あぁ……そうだった。実はこの文字は俺の同郷の人間しか読めない文字でして。」

「ではエルフ語に翻訳してもらえるか?」

「わかりました。」

 師匠から貰った紙に書いてある、襲撃の日程と場所をエルフ語に翻訳して、彼女に手渡した。

「ふむ……最も速いのが三日後、しかもこの国と来たか。」

「はい、彼女は無理矢理死の女神に突き動かされて、この襲撃を行うことになる……と言っていたので、それを俺に止めてほしいとお願いしてきました。」

「なるほどな。理解した。」

 カリンは状況を理解したところで、湯呑みの中に入っていたマンドラ茶を一気に飲み干した。

「要は三日後、社長とその女が思う存分戦えるように、避難の準備を整えておけと、そういう話だな。」

「無駄な被害は出したくないので、できればお願いしたいです。」

「ふむ、わかった。手筈は整えておく。だが、一つ質問があるぞ社長。」

「なんですか?」

「社長はその女に勝てるのか?」

 カリンのその質問には、俺は即答することができなかった……。すると、俺の気持ちを察したらしく彼女は一つ頷いた。

「難しいということはよくわかった、答えなくても良い。」

「すみません……。」

「いや、謝ることはない。実際問題、めちゃくちゃな強さの社長が戦って、勝てるかどうかわからんその女には、此方も勝てぬだろうからな。」

 そう言ってカリンは笑う。

「三日後までに、此方らで支援できることはなるべく準備しておく。だから、社長はしっかりと体を休め、備えてくれ。」

「ありがとうございます。」

 そして彼女と三日後の動きについて綿密な打ち合わせをして、俺は屋敷へと戻った。

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