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第五章
女神が実体を得るということ
しおりを挟む師匠の後ろ姿を見送ると、マジックバッグからイリスが飛び出してきた。
「あの人……ヒイラギさんのお師匠さんだったんですね。」
「あぁ、間違い無い。」
「私がヒイラギさんをこの世界に転生させて……死の女神はヒイラギさんのお師匠さんを、この世界に転生させた。……こんな偶然があるのでしょうか。」
「わからないな。だが、死の女神ってやつは、師匠の体を奪い取ろうとしてるみたいだ。依り代ってやつらしいな。」
「女神の依代……まさかそんな事を考えていたとは。」
さっきまで師匠が座っていた席にイリスは座ると、彼女は難しそうな表情を浮かべた。
「さっき師匠からも聞いたけど、やっぱりヤバい物なのか?それって……。」
「補足して説明しておくと、まず第一に私達女神という存在は、そもそも実体というものがないんです。」
「ふむ。」
「実体がない故に、あまり世界に干渉ができないのが現状なのですが……実体を持ってしまうと、世界に直接干渉できるようになってしまうんです。つまりどういうことかというと、死の女神が実体を得てしまった場合……この世界で好きなだけ、彼女の力を振るうことができるようになってしまうんです。」
「で、自分の力を使ってイリスや他の女神を全部消し去ってしまおう……ってわけか。」
とんでもなくヤバい計画だというのは、もう理解できた。師匠も自分の体を好き勝手使われるのは本望ではないと言っていたし、なんとかしてその計画を阻止しないとな。
最後に手渡された紙を開いてみると、そこには何日後に、どこに彼女が派遣されるかが詳細に書いてあった。
「一番近いのは三日後……エルフの国か。」
「それは?」
「師匠が最後に渡してくれた、死の女神の命令でどこを襲撃に向かうかを書いてくれてる。」
すると、またイリスが少し考え込んだ。
「単にあの方を依り代にするだけなのであれば、襲撃なんてさせなくてもいいはず……。そう考えると、まだ準備が整っていない?」
「じゃあ襲撃させることで、準備が整うってことなのか?」
「死の女神の狙いは分かりませんけど、恐らくはそういう事かと。」
それなら師匠を止めることで、死の女神の計画も邪魔できるかもしれない。
「イリス、師匠は死の女神に自分の体の自由を奪われてると言っていた。それを何とかする方法って無いかな?」
「女神との盟約はかなり強固なものですから、難しいとは思いますけど……何とか探してみます。」
「頼んだ。俺は師匠を止めてみせる。」
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