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第五章
ワクチンの効果
しおりを挟む厳重な拘束具でガチガチに拘束されて運ばれてきたのは、隷属の腕輪で好き勝手やっていたあの男だった。
拘束具でガチガチに拘束されているものの、何か薬を投与されているようで、まるで抵抗する気配がない。
その男へ、試作品のワクチンを手にした獣人の研究員が近づいていく。
「では、実験を始めてください。」
ジルのその言葉を合図に、研究員はワクチンの入った注射器を男にゆっくりと刺しこむ。そして金色に輝く液体を注入していった。
すると、瞬く間に変化が起こる。
「むっ、男の腕が……。」
異形と化していた男の腕が、徐々に普通の人間の腕へと戻っていったのだ。
「あの男の腕は、確か一度ヒイラギが切り落としたと言っていたな?」
「あぁ、切り落とした方の腕が魔物化してたみたいだが……魔物化が治ったらなんか生えてるな。」
驚くことに、一度俺が切り落としたはずの男の腕が、また綺麗に生えているのだ。
魔物化が治ったことに驚いていたのも束の間、男の意識が急に覚醒し、拘束具の下で暴れ始めたのだ。
「んぐーーーっ!!むーーーっ!!」
その様子を見ていた研究員が、ジルに向かって問いかける。
『口の拘束を外しますか?』
「いえ、その必要はありません。魔物化が治っているのであれば、規定量の鎮静剤で大人しくできるはずです。」
『了解しました。鎮静剤を投与します。』
解けるはずのない拘束から逃れようと暴れている男の首に、研究員は注射器で鎮静剤を投与した。
すると、すぐに男は大人しくなってしまう。
「薬品に対する耐性も、元通りですな。」
サラサラとジルは今の実験結果を記録していく。その最中に、シンがフィースタにあることを問いかけていた。
「フィースタ殿、あの薬はどのぐらい時間をかければ量産できるのだ?」
「量産は今のところ少々難しいです。ですが、製作方法を変える必要はなさそうなので、材料さえあれば、私達の手で一日に三本ほど作ることが可能でしょう。」
「ふむ……一日で三人分か。」
シンが自分の鬣を指で触りながら難しそうな顔をしていると、その隣にいたエートリヒが口を開いた。
「仮にこれからも彼らのように、魔物化させられた人が増えると想定すると……ある程度の数は、まとめて各国に保管しておきたいところですね。」
「うむ。」
「その点は、私達エルフがなんとか研究を重ねて、量産できるようにしてみせます。」
「お願いするぞ、フィースタ殿。」
その後、今回の実験結果を全員で共有した後、集まった全員が王宮へと招かれ、そこで昼食会が行われることになった。
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