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第五章
カリンの努力
しおりを挟むオムレツ練習記録
・カリン
挑戦1回目……結果、半熟ではないスクランブルエッグが完成。ケチャップをかけて自分で完食。
挑戦2回目……結果、やや半熟のスクランブルエッグが完成。空腹が限界に達したグレイスが、ケチャップをかけて完食。
挑戦3回目……結果、やや半熟の半月状の卵焼きが完成。カリンはグレイスと半分ずつ食べて完食。どうやら今回の挑戦で何かを掴んだらしい。
挑戦4回目……結果、完全に火の入ったオムレツが完成。ボソボソだ…と悲しそうに呟きながらも自分で完食。
挑戦5回目……結果、半熟のスクランブルエッグが完成。途中までは完璧だったものの、形を整える際に勢いが強すぎて中身が四散した。ケチャップをかけて自分で完食。
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挑戦21回目……結果、ツッコミどころのない、完璧なオムレツが完成。カリンが泣きながら完食。
挑戦22回目……結果、完璧なオムレツが完成。グレイスが爆速で完食。
挑戦23回目……結果、22回目と同文。
挑戦総数23回、卵を合計69個消費し、カリンはオムレツを作る技術を完全に我が物にした。
「遂に……遂に我が物にしたぞ!!」
膨らんだお腹を揺らし、両手をぐっと握り込みながら、カリンは滝のように目から涙を流す。
「けぷっ、美味しかったっす~。」
カリン同様に、お腹をぽっこりと膨らませたグレイスは、ゴロンとテーブルの上に横になっている。
「社長よ、この出来ならばマドゥを喜ばせられるか!?」
「大丈夫だと思いますよ。ほとんど俺の作ったものと変わらない出来ですから。」
自分のためではない、誰かのために頑張ったからこそ、カリンは技術を体得するまでの時間が早かったのかもしれない。
正直なところ……彼女には悪いが、今日のうちにできるようになるとは、これっぽっちも思っていなかったから、俺自身としても予想外だった。
「そうかそうか、久方ぶりに努力する楽しさを知ったぞ。この達成感が何とも代えがたいのだ。」
マンドラ茶を飲みながら、カリンはほぅ……と満足そうにため息を吐いている。
「早速今日の夕飯に、ユリとマドゥに此方の腕前を見せてやるとしよう。今から楽しみだな。」
「神華樹の果実を食べさせるのも忘れないで下さいね。」
「無論、忘れてなどおらん。あれを食べて、マドゥが本当に普通の人間に戻れれば良いのだが……。」
「一応もう一つ、さっき収穫したばかりの神華樹の果実も渡しておきます。そのまま食べさせてもいいと思いますし、果汁を搾ってそれを飲ませても良いかもしれません。」
「うむ、ありがたく受け取っておこう。何から何まで感謝するぞ社長。きっと……きっと明日には、何か良い報告ができるはずだ。期待して待っていてくれ。」
その後、カリンと別れて明日の朝を心待ちにしながら、俺は一日を過ごすのだった。
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