転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
938 / 1,052
第五章

伝えなければならない悲劇

しおりを挟む

 翌朝……朝食を食べ終わった後、誰かが屋敷の扉をコンコンとノックしている。

「はいはい、どちら様……ってマドゥ?どうしたんだ、こんな朝早くから。」

「お、おはようございます。えっと……し、シアちゃんとメリッサちゃんと遊ぶ約束してて。」

「なるほど、そうだったんだな。今呼んでくるよ。」

 そしてシアとメリッサの二人の名前を呼ぶと、すぐに飛んできた。

「あ!!マドゥくん、おはよ!!」

「おはよ。」

「お、おはようシアちゃん、メリッサちゃん。きょ、今日は何して遊ぶ?トランプする?」

「トランプもいいけど~、今日はお外で遊びたい気分!!みんなで鬼ごっこしよ!!」

 するとシアは踵を返してリビングに向かうと、膨らんだお腹をポンポンと撫でていたグレイスを捕まえて、またすぐに戻ってきた。

「うきゅぅぅ……危うくさっき食べたご飯全部出るところだったっす。」

「グレイス!!一緒に鬼ごっこしよ?」

「鬼ごっこっすか?食後の運動にもってこいっすねぇ~、いいっすよ!!」

「えへへぇ~ありがと~。」

 嬉しそうなシアに、グレイスはもみくちゃにされている。だが、グレイスもそんなシアの愛情表現を全身で受けて、まんざらでもなさそうだ。

「じゃあお兄さん!!行ってきます!!」

「いってきます!」

「あぁ、怪我にはくれぐれも気を付けて遊ぶんだぞ~。」

 無邪気に走っていったシア達を見送っていると、ひょっこりと俺の横からカリンが姿を現した。

「マドゥも友達ができて楽しそうですね。」

「いやはや、最初はどうなる事かと冷や冷やしたものだが……なんとか馴染んでくれたようで、此方も安心だ。」

 今のところ幸せそうな話題だが……アレについて、カリンに伝えておかなければならない。

「幸せな雰囲気をぶち壊すようで心苦しいんですが……。」

「む?なんだ?」

「これをエートリヒから預かっていました。」

 俺はエートリヒから預かっていた、マドゥの母親の診断書を彼女に手渡した。

「これは……そうか、確かに受け取った。」

 カリンはその診断書に目を通すと、やるせなさそうな表情で、折りたたんでポケットへとしまった。

「…………この事実は、マドゥには伏せておいたほうがよさそうだ。知らせてやりたい気持ちも山々だが……。」

「そうですね。しばらくは、伏せておいたほうが良いかもしれません。」

「本当ならあの母親には改心してもらいたかった。そして、息子を愛する気持ちを思い出してほしかったのだが……残念だ。」

 空を見上げて、少し悲しそうにカリンはそう言ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

隣国から有能なやつが次から次へと追放されてくるせいで気づいたらうちの国が大国になっていた件

さそり
ファンタジー
カーマ王国の王太子であるアルス・カーマインは父親である王が亡くなったため、大して興味のない玉座に就くことになる。 これまでと変わらず、ただ国が存続することだけを願うアルスだったが、なぜか周辺国から次々と有能な人材がやってきてしまう。 その結果、カーマ王国はアルスの意思に反して、大国への道を歩んでいくことになる。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...