933 / 1,052
第五章
同じ料理人として
しおりを挟むシン達を連れてあのお店の前まで戻ると、シンは不思議そうに店を眺めていた。
「こんなところにも料理を提供する店があったのだな。」
「所謂隠れた名店ってやつだな。めちゃくちゃ美味しい料理があるぞ。」
「ヒイラギがそこまで言うのなら、よほど美味いのだろうな。」
これから食べる料理を想像したシンは、思わず顔をほころばせる。
「では早速中へ入ろうぞ。」
ゆっくりと扉を開けて、シンは店の中へと入った。
「お邪魔するのだ。」
「へ?い、いらっしゃいませ……ってこここ、国王様!?」
丁度料理を盛り付けていた虎の獣人の店主が、突然のシンの来訪にとても驚いている。
「妾もいるぞ。」
「み、ミクモ様にエルフの方々まで……皆さんどうして私の店に?」
「それは俺が皆を呼んだからだな。」
「勇者様……なぜ私なんかにここまでしてくれるのですか?」
「こんなに美味しい料理を作れる料理人が消えてしまうのは、同じ料理人として見過ごせなくてな。」
そう言うと、店主は今にも涙が溢れそうな目でニコリと笑った。
「ありがとうございます……。」
「さ、そういうわけでみんな分のケーブを頼むよ。とびっきり美味しいやつをな。」
「お任せください!!」
全員にお水を提供した後、彼はさっきまでの何処か悲しそうだった表情とは一変、やる気に満ちた表情で料理を作っていた。
(このお店に入る時……たくさんの人が俺たちのことを目にしていた。それに国王のシンやミクモが入ったお店ともなれば、注目されるのは間違い無い。後は来てくれたお客さんを、料理でどれだけ魅了できるかが勝負になるな。)
そんな事を考えながら、お水を飲んでいると……レイの隣に座ったミクモが、レイに話しかけていた。
「そういえば、クリスタルドラゴン……いやレイよ。お主ら二人きりで歩いておったが、何をしていたのじゃ?」
「そんなの決まっているのじゃ、ツガイのオスとメスが二人きりでいる……それすなわちでーとなのじゃ!!」
「……デートじゃと?」
「そうじゃ~。主と二人きりで……って、むむ?」
レイはチラリと周りを見渡してみた。
「二人きり……ではないじゃと!?これではでーとが成立せぬではないかぁ~!!」
「こ、この後ちゃんと埋め合わせはするから。なっ?」
ガーン……と音が聞こえそうなほど気分が落ち込んでしまったレイを宥める。
「ぜ、絶対じゃぞ主ぃ。」
「あぁ、約束する。」
「なら構わんのじゃ!!」
「相変わらず気持ちの切り替えは早いのぉ。」
そんな事を話していると、みんなの元へ続々と出来上がったケーブが運ばれてきた。
2
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる