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第五章
魔物生態調査施設
しおりを挟む下へと降り続けていた床がピタリと止まると、俺達の前に現れたのは大きな扉だった。その扉にジルが手の平で触れると、ゆっくりと開き始める。
「行きましょう。」
ジルの後に続いて扉の内側へと足を踏み入れると、そこからは白一色の廊下が続いていた。
「真っ白だ……。」
「施設の中は、壁も床も全て白一色で統一しております。万が一ネズミのような小さな小動物が逃げ出したとしても、発見しやすいように。」
「なるほど、理に適ってる。」
納得していると、後ろで扉がバタン!!と音を立てて閉じた。直後、俺たちの足元に淡い光を放つ魔法陣が展開される。
「む、なんじゃ?」
「体を消毒する魔法です。ご安心ください。」
すると魔法陣から白い煙がモクモクと湧き出てきたかと思えば、体がシュワシュワと炭酸水に包まれたような感覚に包まれる。
「お、おぉぅ……体がシュワシュワして変な感じなのじゃ。」
「慣れるまで少し時間がかかりますよ。私もそうでしたから。ほっほっほ。」
そして消毒を終えると、奥の扉が自動的に開いた。
「消毒を終えると、先に進める仕組みです。さ、進みましょう。」
さらに先へと進むと、今度は魔物が観察できるようにガラス張りの部屋が何個も続いている廊下に出た。
「ここにいる魔物は……この前シンと捕まえてきた魔物か。」
「その通りです。」
俺たちが入ってきたのを見ると、魔物が一気に凶暴になり、ガラスをバンバンと叩き始めた。
「やはり黒い血液の魔物は凶暴です。これでも鎮静剤を打っているのですが……。自分以外の何者かを視界に入れると、こうなってしまうのです。」
鎮静剤を打っても、こんなに凶暴性が残っているのはやはり異常だと言わざるを得ない。
「これを見た後に、あのボルトドラゴンを見ると……仮に黒い血液の魔物を食べていたとしても少し大人しく見えてしまいます。」
「確かに……。」
黒い血液の魔物は痛みや恐怖心といったものを抱いていなかったのだが……ボルトドラゴンは理性が残っている代わりに、カリンに恐怖したり、サンダーブレスを喰らって痛がっていた。
「まぁ、その辺も調査をしてみれば何か分かるかと。」
暴れている魔物たちの目の前を通って、さらに奥の扉にジルは手を触れた。
「ボルトドラゴンは、今のところ収められる部屋がないので、この奥の広い実験室へと運びました。」
そして扉が開くと、そこは展望デッキのような造りになっていて、ガラスの壁の近くに行くと、そこから拘束されたボルトドラゴンの姿が見えた。
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