924 / 1,052
第五章
地下施設
しおりを挟むジルのもう一つの顔を知って、驚いている最中にも、彼はレイが椅子代わりにしていたボルトドラゴンへと顔を近づける。
「ふむふむ、流石は龍種と言ったところでしょうか。生命力が凄まじいですな。」
虫眼鏡のようなもので、ボルトドラゴンの体を隅々まで観察していくジル。するとあることに気がついた。
「おや?ところどころに真新しい皮膚が見受けられますな。しかし、これだけ全身が満遍なく黒焦げになっているのに、奇跡的にここだけ無事だったとは考えにくい。恐らくは再生したのでしょうか。」
魔物を見慣れているジルならではの観察眼は凄まじく、あっという間に先程までボルトドラゴンが超再生で体を再生していたことに気がついてしまった。
「しかし、この紋様はいったい……。」
「それはワシが刻んだ封印の術式じゃ。超再生のスキルを一時的に封印しておる。」
「ふむ、それはどのぐらい効果が持続しますか?」
「ワシが魔力を使い切らなければ、永遠に効果は続くのじゃ。」
「おぉ!!それは助かりますね。調査中に暴れられては困りますからな。このぐらい弱っていてくれたほうが、こちらとしてもやりやすいです。」
そしてジルがパンパンと手を叩くと、筋骨隆々の獣人達がボルトドラゴンを大きな荷車の上に乗せていく。
「では、運んでください。」
そう声がかかると、ボルトドラゴンは荷車に揺られながら運ばれていった。
「せっかくですから、ヒイラギ様も少し見学していかれますか?」
「え、いいのか?」
「ほっほっほ、構いませんよ。シン様より、ヒイラギ様には国家機密も見せて良いと言われておりますから。」
「あはは……それじゃあ差し支えのない所まで見学させてもらおうかな。」
「少々心臓に悪い場面もございますので、その点だけご注意ください。それではこちらへどうぞ。」
そして俺とレイは、ジルの後に続いて通りを歩いていった。すると、驚くことに市場にある、彼がオーナーを務める魔物肉専門店へと案内されたのだ。
「研究所みたいなところに行くんじゃ?」
思わず前を歩くジルにそう問いかけてみると……。
「えぇ、これから施設へと参りますよ。まずはこちらの部屋へお入りください。」
彼に案内されたのは、とても広く殺風景な部屋。壁には一つだけレバーが取り付けられている。
「これを下げると……。」
「おぉっ!?」
ジルがおもむろにレバーを下げると、ガコン……と床が沈み、エレベーターのようにドンドン下へと下がっていく。
「実は私の営業するお店の地下が、施設になっているのですよ。他にも入口はありますが……それはまた次の機会にお見せしますね。」
地下にそんな物があったとは……驚きで言葉が出てこない。いったいこの地下でどんな研究が行われているのだろうか。
3
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる