919 / 1,052
第五章
現れる雷雲
しおりを挟むエートリヒからの要件を全て聞き終え、彼と別れた後、俺は王都の市場を訪れて普段使うような食材の調達を行っていた。
「うん、このぐらいあれば三日四日は持つだろうな。」
家には大喰らいが三名いるからな。ランとレイとグレイスと……あの三人は胃袋が普通の人間のそれじゃないから、本当に食べる量がとんでもない。
「さて、後はハリーノ達の営業の様子を見て帰ろうかな。」
そしてハリーノ達の様子を確認するために通りを歩き、彼女達が営業をしている場所へと向かうとやはり行列ができていた。
「相変わらず大人気だな。ありがたい。」
その行列の横を通って、彼女達が忙しなくお菓子を売っている様子を眺めていると……。
「ん?」
先程まで雲一つ無い快晴だったのに、急に影が降りたのだ。
「なんだ?雨でも降るのか?」
そんな疑問を抱いていると、みるみるうちに空が黒い雲で覆われていく。終いにはゴロゴロと雷の音が鳴り始めた。そしてゴロゴロと音がした直後、俺の真上で雲を切り裂くように稲妻が走ったのだ。
「落ちたら大変だ。危険だから俺も手伝って早く終わらせよう。」
小走りで彼女達の元へ近付く。
「あ、社長~お疲れ様です~。」
「みんなお疲れ様。雷が落ちてくるかもしれないから、並んでるお客さんに対応したら営業は終わりにしよう。」
「わかりましたぁ~。」
そして俺も手伝いに入ろうとしたその瞬間だった。
「ッ!!殺気!?」
真上から強烈な殺気を感じて、反射で上を向くが……そこには今にも雷を落としそうな雲があるだけ。
「社長~どうしましたぁ?」
「みんな、屈んで体勢を低くしてくれ。何か来る。」
「わわ、わかりましたぁ~!!」
そう声をかけた直後、雲の奥で一瞬ピカっと光が輝く。その光が見えた瞬間、俺の脳裏にカオスドラゴンがブレスの構えを取った姿がフラッシュバックする。
「まさかッ!!」
俺は直感を信じ、強く地面を蹴り抜いて少しでも高く飛び上がる。そんな俺を狙ったように、雷雲の中から巨大な雷が落ちてきた。
これを避ければ、下にいるみんなが危ない。俺が上空で受け止めるしかない。そう判断した俺はできる限り龍化を進めながら雷へと突っ込んだ。
落雷のダメージは、ボルトドラゴンから受けた雷で把握している。問題なく受け入れるはずだ。
「ふんっ!!」
高を括って雷をマトモに受けたのだが、あの時ボルトドラゴンに落とされた雷よりも、遥かにこの雷のほうが強力だ。
全身がビリビリと激しくしびれて、体のあちこちが焦げている。
想定外はあったもののなんとか雷の直撃を受け切ると、雷雲を切り裂きながらこの雷を放った主が俺の前に姿を現す。
「クヒヒヒ……よォ、随分探したぜ?龍モドキィ。」
悠々と俺の前に姿を現したのは、イヤらしい笑みをいっぱいに顔に貼り付けたボルトドラゴンだった。
3
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる