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第五章

料理の匂いに誘われて、目覚める少年

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 出来上がったリゾットを持って少年が寝ているという部屋に入ると、彼はまだ眠りについているようだった。

「カリンはもう少しで目覚めるって言ってたよな。」

 それなら、この子が起きるまでここで待ってみるか。起きた時に周りに誰もいなかったら不安だろうし、何よりここはこの子にとっては知らない場所だ。それでパニックになって、魔物化されたら大変だからな。

「一先ず料理はここに置いてっと。」

 ベッド脇の机の上に料理を置いて、椅子に座りながら少年の寝顔を眺めていると……。

「ん?」

 料理のある方に寝返りをうったと思ったら、ヒクヒクと鼻を動かして、必死に匂いを嗅いでいるような仕草を見せる。

「いい匂い……って、こっ……ここはどこ!?」

 料理の匂いに誘われて、ゆっくりと目を開けた少年は、ここが知らない場所だと気づいて飛び上がる。

「まぁまぁ、落ち着いて。」

「あっ、お前はっ!!僕をどこに連れてきたんだ!!」

「それは、ご飯を食べながらゆっくり話そう。」

 俺を威嚇する少年を宥めながら、今しがた作ったリゾットを彼に差し出した。すると、ヨダレを垂らしそうにしながらも、キッとこちらを睨みつけてきた。

「へ、変なもの入ってないか?」

「もちろんだ。俺は君に酷い事をしたアイツとは違うから、安心して食べていい。」

 優しくそう言うと、少年はスプーンでリゾットをすくい上げて一口食べた。すると、パチッと大きく目を見開く。

「んむっ!?お、美味しい……。」

「だろ?料理の腕には自信があるんだ。」

 お腹が空いていたのだろう、少年はあっという間にリゾットを完食すると、少し物足りなさそうな表情を浮かべていた。

「もっと食べたいか?」

「な、なんでわかったの?」

「そう顔に書いてあるからな。」

 すると、彼はペタペタと自分の顔の感触を触って確かめ始める。

「それじゃ、おかわり持ってくるから。ちょっと待っててな。」

 そして部屋を出ようとすると……。

「あ……ま、待って!!」

「ん?」

 急に少年に呼び止められる。

「なんで僕にこんなに優しくしてくれるの?僕に何をしてほしいの?ねぇ、教えてよ!!」

 そう問いかけてきた少年の瞳には、涙が溜まっている。

「すごく酷い騙され方をしたから、そう簡単には信じてもらえないかもしれないけど……。」

 俺は少年に近づくと、ポンと頭に手を置いてワシャワシャと撫でた。

「俺たちは君を助けたいんだ。それに対する見返りなんて、何もいらない。だから、今はまず美味しいご飯を食べて、元気になってくれ。」

 こんな事を言われても、急に受け入れられるわけない。少し一人で考える時間も必要だろう。一度改めておかわりを取りに行くか。
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