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第五章

残酷な現実

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「社長っ!!無事か!?」

「大丈夫ですよ。それより、何か見つかりました?」

 くるりとカリンの方を振り返ると、彼女はおにぎりを頬張っている少年を見て、ポカンとした表情を浮かべていた。

「……此方がいなくなった間に何があったのだ?」

「ちょっと話をしただけですよ。」

「ふむ、まぁ落ち着いたのならば何よりだった。」

 カリンは俺の隣に座ると、おにぎりを頬張っていた少年の目をじっと覗き込みながら、あることを問いかけた。

「少年よ、確認しておきたいことがある。お前は人間の国から、ナルダという男に連れてこられたのだな?」

「んぐ、ごくっ……ぷはぁっ。そうだよ、お母さんに会わせてくれるっておじさんが言ったんだ。」

「そうか。」

 少年に同情の視線を向けながら、カリンは俺にある資料を手渡してきた。それに目を通してみると……。

「っ、これは……。」

「目にするのも酷なほど、残酷なことが行われているだろう。」

「はい。」

 この実験記録には、この少年に行われた非道の実験結果が記載されていた。

「それに書いてあるものとは別に、この少年を元の姿に戻す方法を、何とか資料を読み漁って調べてみたが……。」

 言葉の途中でカリンは俯いた。

 その仕草で概ね察しはついたから、それ以上何か質問することはしなかった。

 それから少しして、カリンは顔を上げると少年へ言葉をかけた。

「少年よ、今から少し残酷な話をする。覚悟して聞け。」

「え?」

 状況が飲み込めない少年は、首を傾げる。

「お前を母親に会わせてやると言った張本人のナルダは……。」

 その言葉を聞いた瞬間、少年は怒りながら立ち上がる。

「そんな訳ないっ!!おじさんは来る、絶対約束を守ってくれる!!」

 興奮している少年の手足は、異形へと変わっている。その様子にカリンは一歩も引くことなく、話を続けた。

「少年よ、これを見ろ。」

 そう言ってカリンが少年に見せたのは、この少年自身の実験記録。それを見た少年の顔色が変わる。

「なに……これ。嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だッ!!」

 少年の感情が高まっていくと同時に、体がどんどん魔物へと変貌していく。

「ウッ……ガアァァァァッ!!」

 信じられない事実に正気を失ってしまい、完全に魔物となってしまった少年は、怒り狂いながら暴れ始めた。
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