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第五章

少年の心を掴め!

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 俺を囲んだ魔法陣からは炎や氷……水、雷といろんな属性の魔法が同時に放たれた。

(この狭い空間じゃ、全部は避けきれないな。)

 そう判断した俺は、自分の防御力を信じて体を一気に龍化させ、魔法を喰らいながら異形へと変貌した少年へと突っ込んだ。

「ッ!!ソノスガタ……オマエモオジサンニ?」

 俺が龍化して彼に近づくと、少年は俺の姿を見て攻撃の手を止めた。

「君とは違う。俺は自分でドラゴンの力を取り込んだから、こんな風に姿を変えれるんだ。」

「ナラヤッパリテキダ!!」

 そして再び攻撃を仕掛けようとしてきた少年に、俺は制止の声をかける。

「まぁ一回落ち着いて、少し話をしようじゃないか。」

 少年の目の前で敵意がないことを示すため、龍化を解いてどっかりと座る。すると、彼は警戒しながらも少しずつ異形の姿からもとに戻っていく。

「その姿は自分で変えたりできるのか?」

「できる。おじさんはこんな風に、自由に変身できるようになったのは僕が初めてだって。」

「そうか。で、そんなふうになってしまった原因は、何か自分でわかるか?」

「たぶん……これだと思う。」

 そして少年は、犬の餌を入れるような皿に入った、ドロドロの何かを見せてくれた。

「これは?」

「僕のご飯。」

「ご飯!?コレが!?」

「うん。」

「絶対美味しくないだろそれ……。」

「美味しくないけど、食べなきゃ死んじゃうから。」

 あろうことか少年は、それをまた食べてみせようとした。その手を俺は反射的に掴んだ。

「待った。それ食べるぐらいなら……ほら、これあげるよ。」

 俺はマジックバッグの中から、作り置きしていたおにぎりを取り出して、少年へと手渡した。

「これなに?」

「おにぎりっていう軽食だよ。毒なんか入ってないから、安心して食べていい。」

「…………。」

 少し怪しみながらも、少年はおにぎりを受け取ると一口かじった。そして味わうように咀嚼して飲み込むと……。

「お、美味しい。」

「もう少し食べ進めると、中に入ってる具にたどり着くから、思い切り食べてみてくれ。」

 久しぶりのちゃんと味のある食事だったのだろう……。少年はあっという間にツナマヨのおにぎりを平らげてしまった。

「一個で満足か?」

「えっ……。」

「まだたくさんあるぞ。」

「じゃあ、もう少し食べたい。」

「好きなだけ食べるといい。全部食べたって構わないからな。」

 そして少年にまたおにぎりを手渡して、美味しそうに頬張っている姿を眺めていると、大量の資料を抱えたカリンが戻ってきた。

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