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第五章
実験記録
しおりを挟むカリンside
ヒイラギにあの少年との戦闘を任せ、カリンは地下室をひた走る。
「人を怪物へと変える事が出来るのならば、それを逆にもとに戻すことも可能なはずだ。」
未だ手を付けていない部屋をカリンは、バタンバタン!!と開けていき、中を確認しては目的の部屋でないとわかると、すぐに別の部屋へと移動した。
「ここも違う!!どこだっ!?」
そして最後に残った一番奥の部屋を開けると、そこには大量の資料が山積みになっていた。
「これだっ!!」
その資料の山にカリンは飛びつくと、ものすごい勢いで確認していく。
「くっ、ナルダの奴めとんでもない研究をしていたものだな!!」
研究資料を漁りながら、ナルダが魔物の遺伝子を無理矢理人間に組み込んで、異形へと変える実験をしていたことを、カリンは改めて知った。
その実験資料に目を通しながら、少年をもとに戻す方法を探っていると、山になった資料から、少年に行われた実験記録が発見された。
「これは、あの少年の実験記録か。」
・被検体066 実験記録其の一
母親に捨てられた少年を人間の国から攫ってきた。言う通りにしたら母親に会わせてやる……と、口車に乗せてやったら、あっさりとついてきた。やはり人間離れ扱いやすい。この少年はこれから被検体066と仮称する。
まずは栄養を摂らせるついでに、食事に少しずつ魔物の遺伝子を液状化したものを混ぜて与えよう。
・被検体066 実験記録其の二
魔物の遺伝子入りの食事を与えてから三日、被検体の体に変化が現れた。手足が接種させた遺伝子の元となった魔物と酷似したものに変わった。
被検体066は変化に驚いているが、母親に会いたいという一心で耐えている。次は直接、血管へ魔物の遺伝子を注入してみよう。
・被検体066 実験記録其の三
実験は概ね順調だ。被検体066は、自分の意志で魔物化することを身につけている。時折暴走しかける時はあるものの、完全に理性を失うことはない。
実戦で使えるようになるにはもう少し、薬の調整が必要だ。被検体066のように、大きな負の感情を抱いている者でなくとも、薬の効果が最大限に発揮できるものにしなければ。
追記
何者かが、私の痕跡を追ってこの大陸へと侵入してきているようだ。この実験施設が見つかるのも時間の問題だろう。
後片付けは被検体066に任せ、私はここを去ることにする。
もし……この実験記録を私を追ってきた者が読んでいるならば、ここを見つけ出した褒美に一つだけ教えてやろう。
被検体066をもとに戻したければ、世界樹の果実を食わせてやることだ。
その実験記録を読み終えると、カリンは苛立った様子で、机にそれを叩きつけた。
「外道め、あの時殺せていれば……。もとに戻すには、世界樹の果実が必要だと?くっ、それが無いのをわかって書いたな。」
ギリリ……と血が出るほどカリンは歯を食いしばる。
「だが、コレが本当かどうかはわからん。社長ならば耐えてくれると信じて、もう少し……入念に探すぞ。」
そしてカリンはヒイラギを信じて、少年をもとに戻す方法を必死に探すのだった。
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