上 下
895 / 1,008
第五章

見つけた魔力の痕跡

しおりを挟む

 宝玉にかぶりついたカリンは、じっくりと味わってから、一口目を飲み込んだ。

「んっ、味はなかなか野生的だが悪くはない、乾燥させた塩漬けの肉を口にしているようだ。」

 そんな食レポをしながら、カリンは宝玉を完食すると、自分の内から溢れる力に驚いていた。

「おぉ!!これは……凄まじいぞ。」

 あのライオンの巨人の全てのステータスをモノにしたのだ。恐らく今のカリンの力は……。

 考察している最中に、カリンはおもむろに地面に拳を打ちつける。すると、大きく地面が陥没し地割れが走った。

「魔力を込めずともこの力……久方ぶりに自分が強くなったと実感したぞ。」

 心底嬉しそうに体を動かすカリン。

「しかし社長のそのスキルは反則だな。やる気になれば自分自身を最強にすることはもちろん、仲間をも最強にして、一国を造ることも可能だろう?」

「多分……。」

「では何故それをしなかった?」

「そもそも、そんな事を考えたことがなかったですね。」

 そう答えると、カリンは一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、すぐにクスクスと笑った。

「そうか、そうだったな。此方ともあろうものが、社長の性格を忘れていた。」

 納得したように頷きながら、カリンはクルリと俺に背を向けた。

「さて、ナルダの捜索を再開しよう。時間は限られているからな。」

 そして、再びナルダの魔力を探して歩き回る。道中で何度も原生生物に襲われながらも、懸命にナルダの魔力を探した結果……カリンがとある場所でやっとナルダの魔力を検知した。

「む、見つけたぞ。ここからナルダの魔力を感じる。しかも新しいぞ。」

 カリンがナルダの魔力を感じ取った場所は、誰かが住んでいた形跡のあるボロボロの廃墟だった。

「この下へ続いている。ということは、どこかに下に続く入口があるはずだ。」

 彼女は廃墟の床を入念に調べていく。

「魔力の痕跡はここに残っている。」

 ナルダの魔力の痕跡を辿り、彼女は床に無造作に置かれていた不気味な銅像を手に取った。

 するとガコン……と床が開き、下へと続く階段が現れた。

「なるほど、これが鍵だったというわけか。社長、これは罠やもしれんが……入ってみるか?」

「ナルダが中にいる可能性もあるんですよね?」

「かなり薄い可能性だが、望みはあるかもしれん。」

「なら行きましょう。」

 そして俺とカリンは、隠されていた地下室へと足を踏み入れるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

処理中です...