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第五章

食欲が全てを上回る時……

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 しばらく経つと、プシュプシュと音を立てていた圧力鍋がすっかり落ち着いて、中を確認できるようになった。

「さてさて、どんな感じになってるかな。」

 圧力鍋の蓋を開けてみると、すっかり煮汁の色が染み込み、美味しそうな色へと変化しているオークのバラ肉が見えた。

 それを箸で持とうとしてみると……。

「っと、良い感じに柔らかくなってるな。」

 持ち上げる途中で崩れてしまいそうだったので、そっと戻す。

「オークの角煮はばっちりだ。それじゃあ一気に次の料理も仕上げよう。」

 今度はロース肉と、櫛切りにしたオニオスをフライパンで焼いていく。

 ロース肉に火が入り、オニオスが透明になり始めたら……。

「ここで特製の合わせ調味料をぐるっと回し入れる。」

 この合わせ調味料は、砂糖、醤油、酒、味醂と出汁……そしておろし生姜を混ぜ合わせたもの。

「あとは、この汁を飛ばすように炒めてやれば……。」

 液体が蒸発して、すっかりロース肉と玉ねぎに色がつき、生姜の香りがフワリと香ってきたタイミングで火を止めた。

「よし、オークのロース肉の生姜焼き……完成っ。」

 オークの生姜焼きは、山盛りの千切りキャベツと一緒に盛り付けた。

 そして出来上がったオークの角煮と生姜焼きを、集まっていたみんなの前に配膳していく。

「ほい、今日はオークの肉で作った角煮と生姜焼きだ。」

 配膳された料理を、くんくんとランが匂いを嗅ぐと、一つ大きく頷いた。

「うん!!あの臭いはまるっきりないわね。けど、この香りは違う意味でワタシを刺激してるかも。すっ……ごく、お腹へったわ!!」

「はは、それは良かったよ。」

 俺も席について手を合わせると、みんなも待っていましたとばかりに手を合わせた。

「いただきます。」

「「「いただきま~す!!」」」

 そしてみんなでオークの肉を堪能していると、屋敷の二階からフラフラとグレイスが飛んできた。

「う~、肉っす~。自分も食べたいっす~!!」

「あらあら、発情を食欲が上回ったのね。」

「美味しそうなお肉の匂い嗅いだら、そんなの吹っ飛んだっす!!ヒイラギさん!!自分にもご飯山盛り欲しいっす!!」

「はいよ、今持ってくる。」

 すっかり元気になったグレイスは、誰よりもお代わりして、誰よりも多くオークの肉を食べたのだった。
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