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第五章
オークの匂いがもたらす効果
しおりを挟むまさか、今日この新居で体を洗うことになるとは思っていなかった。幸いなことに、お湯を出す魔道具が風呂に設置されていたままだったから、気持ちよくシャワーを浴びてリフレッシュすることができた。
しっかりと体を洗って、新品の服に着替えてから、みんなところに戻った。
「これで大丈夫かな?」
「クンクン……うん、大丈夫ね。」
俺の近くにランが歩み寄ってくると、くんくんと何度も鼻を鳴らして匂いを確認し、一つ大きく頷いた。
「ドーナ達は別に何も問題なかったみたいだけど、何が問題だったんだ?」
「ヒイラギ、あなた多分オークを倒したんじゃない?しかもついさっき。」
「え、まぁそうだな。」
ランはさっき俺が倒していた魔物がオークだということを、ピタリと言い当てた。
「人間とか獣人族とか、エルフはオークの匂いを嗅いでも特に影響はないの。まぁちょっと獣臭いって感じるぐらいかしら。」
「ふむ。」
「でもね、ワタシ達みたいな魔物には、オークの体臭ってとんでもない発情促進剤なのよ。」
「えぇ!?」
衝撃のカミングアウトだった。まさかオークの体臭が、魔物にとってそんな物質だったとは……。
「はっ!?メリッサとかグレイスは大丈夫なのか?」
恐らく一番匂いを吸い込んでいるのはグレイスだ。それに続いているのは、メリッサだろう。
「まぁ、幸いメリッサはまだそういう年齢じゃないから問題ないわ。でも問題はグレイスね。」
「……あれ?グレイスはどこに?」
「今隔離中よ。流石にあんな姿は他のみんなには見せられないわ。まぁ、一時的なものだから明日には元通りになってるはずよ。」
「そ、そうか。」
一先ず安心した。これからはオークの扱いには十分気を付けようと肝に銘じておこう。
「ちなみにランは……ここまで俺のことを引っ張ってきてくれたけど、体に問題はないのか?」
「ワタシ?まぁ、一瞬ちょ~っとヒイラギのことを襲いたくなったけど……発情期の治め方位熟知してるし、何も問題ないわ~。」
「そっか、ごめんな。これからは気を付けるよ。」
ポンとランの頭に手をおいて謝ると、彼女はガシッと俺の手を握り返してきた。
「や、やっぱり襲ってもいいかしら?」
「ダメに決まってるだろ、ほらあっち行くよ。」
昂りがぶり返したらしいランは、ドーナにズルズルと引きずられていった。
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