870 / 1,052
第五章
あるものを受け取りに…
しおりを挟むそれからシンとともに異常な行動をする魔物を討伐し、十分なサンプルが集まる頃には日が暮れてきてしまっていた。
「うむ、このぐらい倒せば研究には事足りるだろう。」
今運んでもらっている魔物の数は十匹程度。研究にはいろいろなパターンのサンプルがあったほうが良いと思ったので、すべての魔物を違う方法で仕留めてある。
「倒すよりも探すほうに時間がかかったな。」
「幸いなことに、まだこのような異常な魔物の数自体はそんなに多くは無いらしい。」
「でもこれから増えるかもって考えたら、それなりの対応が必要だな。」
「うむ、この件に関しては我の方で対策は進めておく。何かこの魔物について情報がわかり次第、エートリヒと、カリン殿にも共有しよう。」
「頼む。」
あとのことはシンに任せ、俺は一度エルフの国へと戻るのだった。そしてグレイスを連れて、人間の国のとある場所へと向かう。
「グレイス、この辺で降りてくれ。」
「了解っす!!」
グレイスに街の近くに降りてもらい、ここからは徒歩で向かう。
「この街に戻ってくるのも久しぶりな気がするな。」
俺達が降り立ってきたのは、エミルの街。俺がこの世界に来て最初に訪れた街だ。
「ヒイラギさん、ここでなにかするっす?」
「いや、何かするってわけじゃないが……。ある場所に寄っておきたくてな。一先ずはギルドに行こう。」
グレイスを抱いて、ギルドへと向かう。ギルドの扉を開けると、意外にもあんまり人気はなく、ミースと何人かの受付嬢が、一つのテーブルを囲んでお酒を飲んでいた。
「やぁミース。」
「あ!!ヒイラギさんじゃないですか~、今日はドーナさん達は一緒じゃないんですね?」
「あぁ、今日は俺とこの子だけだ。」
ヒョイとグレイスを持ち上げてミースに見せた。すると、グレイスはビシッと敬礼してみせる。
「う、動いた!?」
「あぁ、ミースはまだ知らなかったな。この子はグレイスって……一応ドラゴンなのか?まぁ、俺達の旅を助けてくれてる仲間なんだ。」
「て、てっきりぬいぐるみかと……。」
「ま、紹介はこんなところで、エートリヒからアレ届いてるだろ?」
「もちろん、ちゃんと預かってましたよ。ちょっと待っててくださいね。」
ミースはパタパタと二階へと駆け上がっていくと、すぐに小さな黒色の箱を携えて戻ってきた。
3
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる