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第五章
黒い液体が持つ特性
しおりを挟む翌日……俺は会議が始まるという定刻よりも、少し前に城を訪れていた。そこで一足先にエートリヒと一対一で話をしていた。
「貴公は今回の事件をどう思うかね?」
「どう……というと?」
「貴公もわかっているはずだ。今回の事件には、人を人でないものへと変える薬のようなものを配った、黒幕がいることを。ある証言では死の女神イースに直々に力を授かった……と言っている者もいる。」
「そいつは獣人族の国で俺を襲ったアイツですね。」
「その通り。今はあちらで尋問をされていてね、得られた情報は、逐一私に報告が届いているんだ。その中で、一つ気になる報告がある。」
そう言ってエートリヒは、獣人族の言葉で書かれた報告書を見せてきた。
「これによると、今尋問を受けている男も件の液体を飲んだらしい。」
「でもあの男は、そんなに歪に変わってはいませんでしたよね。ただ腕が生えただけ……のような。」
「あの男はこんなことも言っていたらしい。あの液体は、負の感情が大きければ大きいほど、理性と力を飲んだものに与えるらしい。」
「その話が正しければ、アレを飲んで理性を保てている奴らは、負の感情が大きかったってこと……ですね。」
「鵜呑みにするのであればそうなる。一応貴公が回収してくれたあの液体は、研究機関で究明をしているが……あまり期待はしないでくれたまえ。何せそもそもの物質すらもわからないらしいのでね。」
だが、今の希望はその研究機関の人間が、なんとか解析してくれることを祈るしかない。
「でも、なんとか究明してくれないと、対策も打てませんから、頑張ってもらいたいところですね。」
「あぁ、本当に頑張ってもらいたい。」
一つ大きくエートリヒは頷くと、重厚な鍵のついた箱から、少量の黒い液体の入った小瓶を取り出した。
「貴公にお願いがある。これをエルフのカリン殿に見せてみてはくれまいか?」
「カリンにですか?」
「あぁ、永い時を生きているカリン殿ならば何か分かるかもしれない。」
エートリヒの言っていることは一理ある。彼女なら年の功がある。この鑑定ですらもわからない液体について何かわかるかもしれない。
「わかりました、じゃあ今日の会議が終わったら行ってきます。」
「頼んだよ。」
その後、エートリヒとともに国の大臣衆が参加する会議に出席し、再発防止策や対策案等を議論するのだった。
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