転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
851 / 1,052
第五章

ドーナ、ラン魚への挑戦①

しおりを挟む

 ドーナとランを連れてキッチンに立つと、早速二人が三枚下ろしの練習に買ってきたという体長約30センチ程の魚を取り出した。

 初めての三枚下ろしの練習台にしては少し大きいが、このぐらいの大きさの魚じゃないと学べないこともあるからな。

「よし、それじゃあまずは魚の水洗いから学んでいこう。」

「「水洗い?」」

 二人は揃って首を傾げた。

「魚を水で洗えばいいのかい?」

「まぁ、言葉通りに解釈するならそうなるな。でも、そうじゃない。魚の水洗いっていうのは、鱗を取って、頭を落として内臓を取り除き、魚の血をしっかりと洗う。この三つの工程をひっくるめて水洗いって言うんだ。」

「「へぇ~……。」」

 二人はサラサラとメモ帳に今の説明をメモしていく。

「ってことは、今からその水洗いってやつをやればいいのかい?」

「そうだな。まずは俺が手本を見せよう。」

 ビーミーを一匹まな板の上において、鱗を取り、頭を落として内臓を抜く。そして最後に血合いを綺麗に水で洗って水気を拭き取れば……。

「ほい、これで水洗い完了。さぁ、今度は二人の番だ。まずは鱗を取るところからやってみよう。」

 そして二人は魚の鱗を鱗かきで取り除いていく。ここは簡単だから、何も問題はないだろう。

「こんな感じでいいかしら?」

「一回見てくれるかい?」

「あぁ。」

 二人の鱗を取ったビーミーを見てみると、表面上は綺麗に取れているが、二人ともある部分にほんの少し鱗が残っていた。

「二人とも、ここの背ビレと尻ビレの際どい所に鱗が残ってるな。」

「う……残ってたのね。」

「そこまで気づかなかったよ。」

「ここは誰でも鱗を取り忘れやすい所だ。だが、ここの鱗も取らないと、お刺身にする時に混入するかもしれないから、要注意だ。」

 俺は二人の取り残した鱗を、包丁の切っ先と刃元を上手く使って取り除く。

「今俺がやったように、この部分の鱗は包丁の切っ先と刃元を上手く使えば取れるから、次は意識してみてくれ。」

 鱗が取り終わったところで、今度は頭を落とす工程に移る。

「それじゃ、今度は頭を落とそう。これは、魚の頭の付け根から、胸びれへ向かって斜めに包丁を入れるんだ。裏面も同じ。」

 解説どおりに二人は進めていく。

「よし、次は繋がってる中骨を切り落として、いよいよ頭を落としてみよう。頭を落とすコツは関節に包丁を入れることだぞ。」

 ここまでは順調だった二人だが……二人ともなかなか魚の関節に包丁が入らない事に苦戦していた。

「こ、コイツの関節どこよ!?全然わからないわ。」

「ここ?違う……ここでもない。わ、わからないねぇ。」

 二人が、苦戦し始めたところで俺はメリッサを呼んだ。

「メリッサ、アレはもう描けたか?」

「うん…ばっちり!」

 そしてメリッサは、あるものを俺に見せてくれた。

「うん、素晴らしい出来だ。ありがとう。」

 メリッサに、お願いしていたあるものを手にして、俺は苦戦している二人の元へと向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。 王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...