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第五章
ドーナ、ラン魚への挑戦①
しおりを挟むドーナとランを連れてキッチンに立つと、早速二人が三枚下ろしの練習に買ってきたビーミーという体長約30センチ程の魚を取り出した。
初めての三枚下ろしの練習台にしては少し大きいが、このぐらいの大きさの魚じゃないと学べないこともあるからな。
「よし、それじゃあまずは魚の水洗いから学んでいこう。」
「「水洗い?」」
二人は揃って首を傾げた。
「魚を水で洗えばいいのかい?」
「まぁ、言葉通りに解釈するならそうなるな。でも、そうじゃない。魚の水洗いっていうのは、鱗を取って、頭を落として内臓を取り除き、魚の血をしっかりと洗う。この三つの工程をひっくるめて水洗いって言うんだ。」
「「へぇ~……。」」
二人はサラサラとメモ帳に今の説明をメモしていく。
「ってことは、今からその水洗いってやつをやればいいのかい?」
「そうだな。まずは俺が手本を見せよう。」
ビーミーを一匹まな板の上において、鱗を取り、頭を落として内臓を抜く。そして最後に血合いを綺麗に水で洗って水気を拭き取れば……。
「ほい、これで水洗い完了。さぁ、今度は二人の番だ。まずは鱗を取るところからやってみよう。」
そして二人は魚の鱗を鱗かきで取り除いていく。ここは簡単だから、何も問題はないだろう。
「こんな感じでいいかしら?」
「一回見てくれるかい?」
「あぁ。」
二人の鱗を取ったビーミーを見てみると、表面上は綺麗に取れているが、二人ともある部分にほんの少し鱗が残っていた。
「二人とも、ここの背ビレと尻ビレの際どい所に鱗が残ってるな。」
「う……残ってたのね。」
「そこまで気づかなかったよ。」
「ここは誰でも鱗を取り忘れやすい所だ。だが、ここの鱗も取らないと、お刺身にする時に混入するかもしれないから、要注意だ。」
俺は二人の取り残した鱗を、包丁の切っ先と刃元を上手く使って取り除く。
「今俺がやったように、この部分の鱗は包丁の切っ先と刃元を上手く使えば取れるから、次は意識してみてくれ。」
鱗が取り終わったところで、今度は頭を落とす工程に移る。
「それじゃ、今度は頭を落とそう。これは、魚の頭の付け根から、胸びれへ向かって斜めに包丁を入れるんだ。裏面も同じ。」
解説どおりに二人は進めていく。
「よし、次は繋がってる中骨を切り落として、いよいよ頭を落としてみよう。頭を落とすコツは関節に包丁を入れることだぞ。」
ここまでは順調だった二人だが……二人ともなかなか魚の関節に包丁が入らない事に苦戦していた。
「こ、コイツの関節どこよ!?全然わからないわ。」
「ここ?違う……ここでもない。わ、わからないねぇ。」
二人が、苦戦し始めたところで俺はメリッサを呼んだ。
「メリッサ、アレはもう描けたか?」
「うん…ばっちり!」
そしてメリッサは、あるものを俺に見せてくれた。
「うん、素晴らしい出来だ。ありがとう。」
メリッサに、お願いしていたあるものを手にして、俺は苦戦している二人の元へと向かった。
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