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第五章
人間の国で起きた大事件
しおりを挟む俺が強襲されてから間もなく、人間の国に監禁されていた大罪を犯した犯罪者が一人残らず脱走した……という最悪な報告を聞くことになった。
そこからのエートリヒの判断は早く、人間の国の中に滞在していた獣人達をすぐに国へと帰し、脱走した犯罪者を一人残らず捕まえるまで、他国との行き来を完全に禁止にしたのだ。
事態はすぐに収束するかと思いきや、1週間経っても誰一人として脱走した犯罪者は捕まっていないという。それどころか、犯罪者の行方を調査に赴いていた人員が、殺されてしまっているという話だ。
この事態を重く見たエートリヒは、国の兵士を総動員して犯罪者を探しつつ、金級以上の冒険者に犯罪者の確保を依頼した。
そして、今日……俺はドーナとラン、レイと共に王城へと呼び出されていた。
「今日はよく来てくれた……本当に助かるよ。」
徹夜で寝ていないのだろう、エートリヒは目の下に大きな隈を作っていた。
「もう周知の事実だが、監禁していた犯罪者が全員逃げ出してしまってね。奴らを探しに行っていた調査員も殺されてしまった。今金級以上の冒険者に、声をかけているが……それも時間がかかりそうでね。」
「で、俺達にお願いしたいって訳ですね。」
「その通りだ。受けてはくれないかね?」
「もちろんいいですよ。……でも、一つだけお願いがあります。」
「私にできる事なら応えよう。」
「実は、この国にも一つ大きな家が欲しくて……それを用意してくれませんか?」
現状、俺達が本当に住居だと言えるのは、エルフの国でカリンにもらったあの屋敷だけ。もちろん人間の国に行くこともあるし、獣人の国に行くことだってある。
その時にみんなで休める大きな家が無いのは、なかなか不便なのだ。
「大きな家か、それは王都に用意したいかね?」
「いえ、そこまでは要求しません。」
「わかった。それはこちらでなんとかしよう。約束する。」
「ありがとうございます。」
「調査員が文字通り命を懸けて調べ上げた、資料はここにまとめてある。参考にしてくれ。」
俺はエートリヒからその資料を受け取って、目を通してみた。すると、一人一人の犯罪者の名簿の欄に現在潜伏中の街などの情報がまとめられていた。
「監禁されていた犯罪者は、殺人や強盗などを行った極悪犯罪者だ。貴公も気をつけてくれ。」
極悪犯罪者……尚更野放しにはしておけないな。早いとこ、この国にエルフや獣人達が安心して出入りできるようにコイツらを捕まえないとな。
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