836 / 1,052
第五章
ミルタ商会獣人国支店
しおりを挟む「これはこれは、ヒイラギさん。ようこそいらっしゃいました。」
「こんにちはミルタさん。」
「こんにちは~!!」
「ささ、どうぞこちらへ。」
ミルタさんに案内されて、客人用の部屋へと案内される。すると間もなく、温かい紅茶が運ばれてきた。それを一口飲んだ後、俺はミルタさんに話しかけた。
「こっちでの商いも順調みたいですね。」
「おかげさまで、色々な獣人の方々と繋がることができまして……やっと軌道に乗れました。」
「それはよかった。ここの従業員には獣人を?」
「えぇ、こちらは獣人国支店ですから、せっかくなら従業員も獣人の方々を採用しようも思いましてな。今は5人の獣人に働いてもらっています。」
獣人の国だから、従業員には獣人をという考えはとても良いことだと思う。訪れる客も獣人が大半だろうし、何よりここで働く獣人を見て、人間といっしょに働きたいと思う人もきっと現れるだろうからな。
「いやはや、それにしても聞きましたぞヒイラギさん。」
「何をです?」
「ヒイラギさんは、この国を危機から救った勇者ということをです。」
「あ……。」
そう言えば、あの時ははぐらかしたんだよな。獣人と仲良くなったら聞いてみて……と。
「それを聞いてやっと納得しました。ヒイラギさんが何故こんなにも獣人の方々に名前と顔が知れ渡っているのか。」
「あ、あはは、そんなに大したことじゃ……。」
謙遜していると、隣に座っていたフレイにぎゅっと手を握られた。
「大したことだよ!!だってあの時ヒイラギさんは、ボクとお姉様も助けてくれたんだから!!」
「フレイ……。」
「だからもっとヒイラギさんは胸を張るべきなの~!!」
そしてフレイにブンブンと握られた手を振り回されてしまう。
「わ、わかったわかった。落ち着いてくれ。」
フレイの頭を撫でると、やっと彼女は落ち着きを取り戻した。
「ご、ごめんね。ちょっと熱くなっちゃった。」
「大丈夫。今回は俺が悪かった。」
紅茶を飲んで、しゅん……と縮こまるフレイの頭を撫でながら、俺はミルタさんへ本題を切り出した。
「さて、それじゃそろそろ……。」
「そうですな。積もる話はまたゆっくりと別の場所で。今は商談を致しましょう。」
そして、新作のお菓子を開発するための商談が始まるのだった。
4
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる