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第五章
アルコールを含んだ果実
しおりを挟むいざ、パイナップルのような果実にレヴァを当て、ほんの少し切った瞬間だった。
「んっ!?」
少し切った瞬間に、ぶわっ……と熟れた甘い香りが溢れ出してきたのだ。さらに切り進めると、みずみずしさを象徴するように、果汁も溢れ始める。
「この果汁……なんだろう、アルコールの匂いがするな。」
溢れ出した果汁を少し指で掬って口に運んでみると、疑念が確信に変わった。
「間違い無い。この果実はアルコールを含んでる。しかも、とんでもなく強いぞ。」
これは流石に子供には食べさせられないな。別盛りにしよう。
中に詰まっていた実はパイナップルと同じく、中心に芯があった。その芯を取り除いて果肉を一口サイズに切り分け、別皿に盛り付ける。
「試しに味見……。」
取り除いた芯の部分に齧りついてみると、そこからでもアルコールを含んだ果汁が溢れてくる。
「味は甘さだけを煮詰めた、酸味のないパイナップルって感じだな。だが、これに含まれてるアルコールは下手したら芋酒よりも強いかも。」
いくら美味しいからって、食べ過ぎは禁物だな。
「よし、それじゃ改めてフルーツ盛りを完成させるか。」
獣人族の国で採れた果物と、エルフの国で採れた果物をミックスして、フルーツ盛りを仕上げていく。
ちなみに料理業界には、このフルーツ盛りの腕前を競うコンテストもある。その道のプロは、包丁と果物だけで一つの芸術作品を作り上げてしまうのだ。
いつか教わりたいと思っていたのだが……残念ながらその機会には恵まれなかったな。
そして今の俺ができる飾り切りと、盛り付け技術を詰め込んだフルーツ盛りが完成する。
すると、それを見たレイラが口元をハンカチで押さえながら感動していた。
「げ、芸術でございます。」
「そ、そんなに大したものじゃないぞ?ただ少し変わった切り方で果物を切って盛り付けただけだ。」
「今後シン様へ提供する料理の参考に……少々失礼します。」
「へ?」
レイラ達はフルーツ盛りを囲むと、よく観察しながらメモを取っていく。試しに少し何をメモしているのか覗いてみると、驚くことにこのフルーツ盛りに使われている飾り切りのやり方等を事細かにメモしていたのだ。
「す、凄い熱量だ……。」
これが切っ掛けで、後々王宮のメイド達の間でフルーツ盛りの腕前を競う大会が開かれることになったのだとか……。
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