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第五章
一番客は…
しおりを挟むいざ営業が始まり、最初のお客さんとしてやってきたのはミルタさんだった。招待はしていなかったのだが、こういうことを聞きつける耳は流石だ。
「ミルタさんいらっしゃいませ。」
「エルフの特産品を購入できると、話を聞きつけてやって参ったのですが……まさかヒイラギさんがエルフと一緒にいるのは聞いてませんでしたよ。」
「最近ちょっといろいろあって……このお菓子を販売する会社を経営することになってしまったんですよ。」
「その従業員がエルフだというのですか!?」
「そういうことです。」
「獣人族の件といい、今回も交流がなかったはずのエルフと一緒にいるとは……本当にあなたは不思議な御方ですな。」
「ちょっと運がいいだけですよ。さ、何を買っていきますか?」
軽くミルタさんに商品の説明をして、どれを買うのか決めてもらう。
「ふむふむ、どれも魅力的で悩ましいですが……おすすめというどら焼きとマンドラアイスクリームを頂いてもよろしいですかな?」
「わかりました。みんな、オーダーだ。どら焼きとマンドラアイスクリームを頼む。」
「「「はーい!!」」」
いつものようにみんなで手分けをしてどら焼きの皮を焼いて、焼きたての皮で粒あんを包み、マンドラアイスクリームと粒あんを一緒に盛り付ける。そして、出来上がったそれをユリがミルタさんに手渡した。
「お、お待たせした。注文のどら焼きとマンドラアイスクリームだ。」
「おぉ、ありがとうございます。」
「そっちに椅子も用意してあるのでぇ、良かったら食べていってくださ~い。」
「では是非是非そうしましょうか。」
商品を受け取ったミルタさんを、ハリーノが店の隣に設営された飲食スペースに案内していく。それを見送ると、すぐに次のお客さんがやってきた。
「こんにちはヒイラギさん!!」
「おっ、久しぶりだなミース。」
次にやってきたのはエミルの街にあるギルドの長であるミースだ。
「いやぁ~、ヒイラギさんが見つかってよかったですよぉ。あ、ちゃんとドーナさん達にごめんなさいしました?皆さん揃ってすっごく心配してましたからね。」
「あぁ、もう一生分謝ったよ。」
彼女は安心したように笑うと、お菓子のメニューに目を通し始めた。
「どら焼きに、マンドラアイスクリーム……フルーツ大福に、欲張りアイス大福。これ全部甘いお菓子なんですか?」
「そうだな、もし迷ってるなら……いろんなお菓子の良いところが一度に味わえる欲張りアイス大福とかがおすすめだな。」
「じゃあそれと……ギルドのみんなにお土産でどら焼きを10個ぐらいお願いしてもいいですか?」
「もちろんだ。」
そして何人か知り合いも来店しつつ、初めての人間の国での営業は大成功に終わったのだった。
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