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第五章
一ヶ月ぶりの再会
しおりを挟む地鳴りのする方を振り返ってみると……目の前にシアの顔があった。
「お兄さーーーん!!」
「ただい……うぐぉっ!!」
こちらへと飛び込んできたシアの勢いを受け止めきれず、俺はそのまま王宮の外壁に叩きつけられた。
「ずっと……ずっと会いたかった!!もう離さない~っ!!」
「ご、ごめんな?もう離れないから……お、落ち着いて。」
手加減はなく、全力で抱きしめられているため、メキメキと骨が悲鳴を上げている。必死にシアの頭を撫でながら謝っていると、こちらにドーナ達も追い付いてきた。
「ぱぱっ!!」
「やっと帰ってきたわねヒイラギ~。」
「こっちに帰ってきたなら、顔を見せてくれたって良いじゃないか。」
「主っ、会いたかったのじゃ~!!」
「ヒイラギさ~ん!!お帰りなさい!!」
みんなにもみくちゃにされていると、リリンとイリス、そしてライラもこちらへ歩いてきた。
「まったく、やっと帰ってきたわね。」
「これでまた妹様の非常食が確保できた。」
「ふふ、皆さん嬉しそうですね。」
そしてみんなの爆発する感情を一身に受け止め、一先ず落ち着いた所で改めてみんなと向き合った。
「みんな元気そうで安心したよ。ご飯はどうしてた?」
「それならワタシとドーナと、イリスで何とか頑張ったわ!!」
「メリッサに手伝ってもらって、ヒイラギの世界の料理本をたくさん読んで、色々作ったんだよ。」
「私たち、たくさん色んな料理を作れるようになったんですよ。」
「そうだったのか、頑張ったな……ありがとう。」
この一ヶ月頑張ってくれた三人の頭を撫でた。
「お姉さん達の作ったお料理、とっても美味しかったんだよ!!」
「うん…すっごく…おいしかった。」
「そうかそうか、俺も食べたいな。」
子供のシアとメリッサがここまで美味しいと言うのであれば、ドーナ達の料理の腕は確かなものになったのだろう。
どれだけこの一ヶ月で腕を上げたのか……実際に食べさせてもらいたい。
「ヒイラギがたくさんご飯食べさせてくれたら、考えてあげるわ。ねっ?二人とも。」
「そうだねぇ、まずはヒイラギの作った料理が食べたいよ。」
「エルフの国のお話もいっぱい聞かせてくださいね?」
「わかった。」
そう約束していると、リリンがあることを問いかけてきた。
「ねぇ、一応確認だけしておくけど、私たちの世界樹の雄花はどうなったのかしら?」
「あぁ~、それなんだけど……。」
「それは此方が説明したほうが早いだろう。」
そこに現れたカリンは、リリンとフレイに事情を説明すると、ペコリと頭を下げた。
「此方らの我儘で、迷惑をかけてすまなかった。」
「……まぁ、私たちの願いが叶わなかったのは残念だけど。」
「結果的に人助けになったなら、まぁ……いいよね。」
「それにあなたもこっち側みたいだし……。」
「む?」
誠意のこもったカリンの謝罪を受けて、リリン達はエルフの行いを許すことにしたようだ。彼女達の目線がカリンの胸に集中しているような気がするが……まぁ気のせいだろう。
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