転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
800 / 1,052
第五章

ユリの新しい働き口

しおりを挟む

 カリンの想いをくみ取り、俺はユリにある提案をしてみた。

「そんなに今の仕事に不満があるなら、試しに働いてみるか?」

「え、い、良いのか?アタシはお前に剣を向けてしまったんだぞ?」

「まぁ、一時の過ちって誰にでもあるものだからな。」

「社長もこう言ってくれているのだ。試しに働いてみたらどうだ?」

「う、うん……それじゃあよろしく頼む。」

「それじゃあ早速、今日の夕方に研修をしたいんだが……予定は空いてるか?」

「もちろんだ!!」

「それじゃあ今日の夕方、この場所に来てくれ。」

「了解した。」

 そして二人に見送られて、カリンの屋敷を後にしようとすると、その際にカリンにあることを耳元で告げられた。

「社長よ、恥ずかしながら我が娘であるユリは世間知らずだ。此方が甘やかして育ててしまったばっかりに、いろいろと迷惑をかけてしまうやもしれん。」

「大丈夫ですよ。誰だって最初からうまくやれるわけじゃないんですから。」

「すまんな、恩に着る。この埋め合わせはいつかしよう。」

 カリンにユリのことを託され、俺は営業に戻るのだった。





 夕刻になると、誰よりも早くユリが仕込みをする場所で待っていた。

「あ、しゃ、社長。」

「お、随分早いなユリ。やる気があって何よりだ。」

「あの…その、非常に言いにくいんだが、実は生まれてからというものの自分で料理をした経験がなくてだな。少し不安なんだ。」

「ん、むしろそれは助かるかもな。」

「な、なんでだ?普通こういうのって経験があったほうがいいんだろう?」

「確かに、普通ならそうだろうな。だが、これからやってもらうのは、今までみんながやってきたような料理じゃないんだ。だから、経験は関係ない。」

「そうなのか……。」

 少し安心したように、彼女はホッと一つ安堵のため息を吐き出した。

「もうそろそろみんなが来ると思うから、先にこれに着替えると良い。」

 裁縫が得意なハリーノに社員みんな分のエプロンを作ってもらっていたのだ。これはその際に予備として作ってもらったもの。

「わ、わかった。すぐに着替えてくる。」

 そしてユリは更衣室にした部屋に入って行った。彼女が着替えているのを待っていると、今日の仕込み担当の社員のエルフたちがやってきた。

「しゃ、社長~お疲れ様です。」

 真っ先に挨拶に来たのはハリーノだ。

「やぁハリーノ。今日は一人新入社員がいるから、よろしく頼むな。」

「新しい人が入ったんですかぁ?な、仲良くできるか心配ですねぇ。」

「大丈夫、寧ろ向こうの方が心配してると思う。そういうわけだから、みんなもよろしく頼む。」

「「「は~い!!」」」

 元気に返事をしてみんなも更衣室へと向かって行った。多分顔合わせは更衣室で終わるだろう。後はユリに手取り足取り仕込みの手順を教えるだけだ。明日は俺も面会に同席しないといけないから、今日で教えられることは教え切らないと。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで220万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...