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第五章

エルフとの外交へ向けて①

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 しばらく森の中を歩いていると、突然フィースタが歩みを止めた。

「着きました。」

「ここがそうなのか?」

 彼女に案内されて連れてこられたのは、大きな白い木のある場所だった。その白い木にフィースタが触れると、木の幹に魔法陣が現れた。

「そういう仕組みか。」

「はい、この魔法陣はこちらから向こう側には繋がっていますが、向こうからは帰ってこれませんので、帰りはカリン様にもらった転送の結晶を使ってください。」

「わかった。」

 木の幹に描かれた魔法陣に触れて魔力を流すと、魔法陣が光り輝き始めた。

「それじゃあ行ってくるよ。」

「お気を付けて……お帰りをお待ちしておりますね。」

 そして魔法陣から光が溢れ出してくると、一瞬体がフワリと宙に浮く感覚と共に、目の前の景色が一瞬にして変わった。

「おっ?景色が変わった……ってことは、獣人族の国に来れたんだよな?」

 辺りを見渡してみるが、周りは森で見通しは悪い。一度飛んで周りを確認してみるか。

「龍化。」

 龍化で翼を生やして、上空へと飛び上がる。そして辺りを確認してみると……。

「あそこに王都がある……ってことは、ここは王都からちょっと離れた所ってわけか。」

 ここからなら、すぐに王都に行ける。

「よし、ひとっ飛び行くか。」

 翼を羽ばたかせて、一気に王都へと向かう。そして、王都の関所の前に降り立った。

「いよっと。」

「あ、あなたはもしかしてっ……ひ、ヒイラギ様では!?」

「ん?」

 関所に降り立つと、そこを守っていた兵士が俺を見て驚いている。

「俺がヒイラギであってるけど……どうかしたのか?」

「一月前に失踪届けが出されてるんですよ!!」

「あぁ~……そういうことだったか。」

 出されていても不思議な話ではないんだよな。

「と、とにかく無事で安心しました。」

「心配をかけてすまなかったな。俺がここで見つかったって報告しといてくれ。」

「了解しました。」

 兵士にそう言って、俺は王都の中へと入った。そして真っ先にシンがいるであろう王宮へと向かう。
 王宮へと足を踏み入れると、メイドさんが俺のことを出迎えてくれた。彼女にシンに会いたいと伝えると、急ぎ足で王宮の中へと戻っていく。

 それから少しすると、王宮の中からドスドスと足音を響かせてこちらにシンが走ってきた。
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