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第五章
秘密の抜け道へ
しおりを挟むフィースタと共にカリンの屋敷へと赴いた俺は、二人と今後の予定について話し合っていた。
「では、後世の育成が済んだ故……そろそろ他種族の国王の元へ赴きたいということだな。」
「はい。」
カリンは机の上に置いてあったどら焼きを手に取り、大口でかぶりついた。
「これは今日、一人の我が子にお使いを頼んで買ってきてもらったものだが……そなたが最初作ったどら焼きと変わらん味だ。」
「それも社員のエルフ達が俺の手助け無しで作ったんですよ。」
「わかっている。昨日のその仕込みの現場も、此方はこれで覗いていたからな。」
そう言って、彼女は透明な水晶玉を手に取った。その水晶玉に映っていたのは、普段仕込みをしている大きなキッチン。
「便利な水晶玉ですね。」
「これもエルフに伝わる秘宝の一つだ。」
そしてカリンは手にしていたどら焼きを、全て口の中へと放り込んだ。
「んっ……さて、ではフィースタよ転送の結晶を社長に預けてやれ。」
「はい、こちらに用意してます。」
フィースタから転送の結晶とやらを受け取った。
「これは?」
「それは転送の結晶という、制限のある場所以外であればいつでもそこに登録されている場所へと転移することのできる結晶だ。」
「なんか脱出の結晶みたいだ。」
「あんな物と比べられては困るな。これはエルフの叡智が詰まった物だ。何度使っても無くなることはない。」
「そんな物を貰ってもいいのか?」
「構わん。そなたはもう既にこの国の一員のようなものなのだからな。」
そう言ってカリンは笑った。
「その結晶にはこの国の座標が登録されている。二つの種族の国王と話をつけた後は、それで戻ってくると良い。」
「ありがとうございます。」
もらった転送の結晶をポケットにしまい込んだ。
「そなたはまずどちらの国の王から話をつけるつもりだ?」
「まずは獣人族の国王から話をつけてみようと思います。」
「ん、ではフィースタよ秘密の抜け道へ案内してやれ。」
「了解しました。それではあなた様……私についてきてください。」
カリンに改めてお礼を言ってから、俺はフィースタの後へと続いた。そして、森の奥へ…奥へと案内されていく。
「あなた様がこの国に来てから、もうずいぶん経ったような気がしますね。」
「時間が経つのは早いな。」
「えぇ、まったくです。人間だというのに……エルフの中に馴染んでしまいましたね。」
「まぁ、一番の要因はフィースタが近くにいてくれたことだと思うけどな。」
彼女が俺のことを認めてくれなかったら……きっと他のエルフ達も、俺のことを認めてはくれなかっただろうからな。
彼女に感謝していると、フィースタは顔を真っ赤にして俯いていた。
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