転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

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第五章

約束の時

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 翌朝……フィースタが焦ったように、俺の部屋に飛び込んできた。

「お、起きてくださ~い!!大変ですよ!!」

「ん……んん?フィースタ、そんなに焦ってどうしたんだ?」

「世界樹の芽が出たんです!!」

「なんだって?」

 いくらなんでも早すぎる。昨日の今日だぞ!?

 フィースタに手を引かれて、昨日カリンが世界樹の果実を埋めた場所を見に行くと、そこにはすでに大量のエルフが詰めかけていた。

 それを掻き分けて、カリンがこちらへ歩いてくる。

「来たな、フィースタに社長よ。」

「世界樹の芽が出たとか?」

「あぁ、どうやらそうらしい。」

 そして彼女の後に続いて、昨日世界樹の果実を埋めた場所へと足を運ぶと……。

「なっ?」

「確かに……大きな若葉が出てる。」

 そこには大きな若葉が地面から力強く生えていた。

「恐らくは、この大地の生命力と魔力をふんだんに含んだあの果実ごと、土に埋めた故にこんなに早く芽が出たのだろう。」

 カリンは愛おしそうに、その世界樹の若葉を見つめている。

「フローラ。」

 そしてフローラの名を呼ぶと、どこからか音もなくフローラはカリンの元へ現れた。

「世界樹の管理は任せるぞ。必ずや先代の世界樹を超える樹に育て上げるのだ。」

「承知いたしました。」

 カリンは頭を垂れるフローラの頭を撫でると、こちらへと歩み寄ってくる。

「社長よ、まだ営業までは時間はあるな?」

「そうですね。まだ時間は大丈夫です。」

「ならば、フィースタと共に此方の家に来い。少々話をしよう。」

 そして俺とフィースタはカリンの屋敷へと招かれた。そこでカリンのもてなしを受けながら、ある話を切り出された。

「社長、此方との約束を覚えているか?」

「満足させたらなんでも一つ言うことを聞いてくれる……ってやつですよね?」

「その通りだ。正直なところ、此方は現状非常に満足している。社長の作る甘味を毎日食べられることも然り、世界樹の子孫が芽吹いたことも然りだ。」

「それってつまり……。」

「少し早いが、社長の願いを聞き届けようと思ったというわけだ。」

 そう言ってニヤリとカリンは笑うと、マンドラ茶を口にした。

「そなたの願いは決まっているのだろう?」

「もちろん。」

「ふっ、まぁだいぶわかりきったことではあるが……このカリンが聞き届けようぞ。述べるがいい。」

 そして、俺はカリンに新しくなった人間の国王と、獣人族の国王と一度面会してほしいという旨を伝えたのだった。
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