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第五章
世界樹の果実
しおりを挟むカリンはそう宣言すると、フローラから世界樹の雄花を受け取った。そしてフワリと宙に浮くと、大きな雌花へと近づいていく。
「さぁ、開け……世界樹の雌花よ。」
そう語りかけながら雄花を近づけて行くと、まるで雌花が待っていたと言わんばかりに、ゆっくりと蕾が開いていく。
「感じるか?自分と対になるものの存在を。」
雌花の中心にひときわ目立つ雌しべへと、カリンは世界樹の雄花の花粉をちょんちょんとつけた。
すると、雌花に変化が現れる。
「お?」
開いていた花が再び蕾へと戻ると、内側から光が溢れ出したのだ。
「来るか!?」
興奮気味なエルフ達の視線が降り注ぐ最中、光を発しながら再び雌花が開いていくと、その花の中心に金色のりんごのような果実が実っていた。
「こ、これが……世界樹の果実っ!!」
そっとカリンが手を伸ばすと、彼女の手の中に世界樹の果実が収まった。
「凄まじい大地の力と、魔力を感じる……。」
エルフ達がそれに見入っていたのも束の間、今度は世界樹本体に異変が起こる。
「むっ!?世界樹が……。」
俺達が今立っている世界樹が、急速に枯れ始めたのだ。
「皆!!急ぎ下へ降りるのだ!!」
カリンのその掛け声で、みんな急いで下へと降りる。そして、全員が地面に足をつけると、まるで溶けるように……世界樹は跡形も無くなってしまった。
「せ、世界樹が……。」
「消えてしまった。」
エルフ達の信仰の対象である世界樹が消えてしまい、何人かのエルフは絶望している。
「最後の最後……実をつける事で生命力を全て使い果たしたか。」
カリンが世界樹が元あった場所に佇んで呟く。
「だが、ここに子孫は残された。」
彼女の手には、光り輝く世界樹の果実がある。これが次の世界樹になるのだ。
「次の世界樹も、此方等が守り育てていく。安心して眠ると良い。」
無くなってしまった世界樹へとそう語りかけると、彼女はその手で土を掘っていく。
「母の育った場所で、お前も育つのだ。」
そして世界樹の果実をそのまま地面に埋め、その上から土をかけた。
「皆、世界樹の受粉……及び次代への継承は終わった。大きく育つよう、水をかけてやってはくれぬか?」
エルフ達は涙を流しながら、世界樹の果実が埋められた場所へ、水をかけていく。
いつ芽が出るかはわからないが、これだけエルフ達みんなから愛情を注がれていれば、きっと大きな世界樹に育ってくれることだろう。
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