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第五章

エルフ達の挑戦

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 今日の営業を終え、更に仕込みも終わらせてフィースタの屋敷へと戻ろうとしていると、カリンが訪ねてきた。

「社長よ、今から少し時間はあるか?」

「大丈夫ですよ。」

「では、此方について参れ。」

 そしてカリンの後についていくと、俺はフローラの研究室へと案内された。

「フローラ、カリンだ。入るぞ。」

 ノックをしてカリンが扉を開けると、花の蜜の香りを凝縮したような香りが溢れてくる。

「カリン様、ようこそいらっしゃいました……って、ななっ、なんで人間も一緒に!?」

「こやつにも世界樹の受粉を間近で見せてやろうと思ってな。それぐらいは構わんだろう?」

「ま、まぁ構いませんけど……。邪魔はするなよ人間っ!!」

「もちろんだ。」

 疑い深く、彼女は俺のことをジッと見つめると、一つ大きくため息を吐き出した。

「では、準備致します。」

 そう言って、彼女は厳重に保管されていた世界樹の雄花を手に取った。それは以前見た時とはだいぶ見た目が変わっていて、果実のような見た目から一輪の花へと変貌を遂げていたのだ。

「ずいぶんと見た目が変わったなぁ。」

「これこそ本来の世界樹の雄花の姿だ。これを今夜……受粉に使う。」

「世界樹に果実を実らせるんですよね?」

「その通り、それによって次の世界樹を誕生させるのだ。」

 そう語るフローラの目には決意が漲っていた。

「ちなみに世界樹の果実ってどんな感じの見た目なんだ?」

「それは……し、知らない。」

「知らない?」

「フローラが知らぬのも当然だ。未だ世界樹が果実をつけたところを目撃した者はいないのだから。無論、此方とて知らん。雌花が咲いたことは何度かあったがな。そのいずれも実をつける前に枯れ落ちた。」

 カリンでさえ知り得ない事に挑戦しなければならない程、世界樹の状況は深刻ってわけか。

「さて、そろそろ雌花が花開く時間だ。他の長老達も集まっている。此方らも行くぞ。」

「御意。」

 二人の後についていき、世界樹を登る。幸い歩きやすい階段が設置されていて登ることに苦労はしなかった。

 そしてフィースタを含む、他のエルフ達が集まっているところに合流すると、彼女達の眼前には大きな蕾がぶら下がっていた。それは今にも開きそうになっている。

「皆、よく集まってくれた。これより世界樹の受粉を行う。」

 カリンがそう宣言すると、エルフ達から拍手が巻き起こった。
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