転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

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第五章

甘味の虜

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 マンドラアイスクリームを受け取ると、カリンは早速粒あんの存在に気がついた。

「む?これはどら焼きの中に入っている……黒く甘い豆だな。」

「粒あんですね。それと一緒にアイスを食べてください。」

「わかった。ではいただこう。」

 カリンはマンドラアイスクリームに、たっぷりと粒あんを乗せてから頬張った。すると、カッと目を見開く。

「むぅっ!?舌の上で溶けていく……だと!?溶けたものが粒あんと混ざり、更に美味さを増していく。」

 カッと目を見開きながらも、カリンの食べる手は止まらない。

「甘さの中に、マンドラ茶のほろ苦さがあり……それがまた粒あんの濃厚な甘さと相性が抜群だ。」

 完璧な食レポを披露して、カリンはマンドラアイスクリームを食べ終えてしまう。

「うむむ、どら焼きも革新的な甘味だったというに、この冷たくとろけるマンドラアイスクリームも、なんと革新的な……。」

 無くなってしまったマンドラアイスクリームを、名残惜しそうに眺めるカリン。

「このような革新的な甘味が、人間の国では一般的なのか?」

 その問いかけに、俺は首を横に振った。

「いえ、違いますよ。」

「では知る者ぞ知る、秘伝の甘味か?」

「それもまたちょっと違いますね。」

「むむ?どういうことだ?」

「これを作れるのは、多分この世界には俺一人です。決して驕ってるわけじゃなくて、それが事実なんですよ。」

 それを聞いたカリンは、改めて俺にある質問を投げかけてくる。

「……ますます不思議な奴だ。言葉に嘘偽りがない。」

 呆れたように彼女は笑うと、フワリと宙に浮いて俺の服の襟を掴んで、自分の方にグッと引き寄せた。

「お前は一体何者だ?」

「その答えは、俺のお願いを聞いてもらってから答えますよ。」

「今はまだ話せんというわけか。……ふ、まぁいい悪意がないのはわかった。」

 そしてパッと手を離すと、改めて指を3本立てて注文を言ってくる。

「では、改めてマンドラアイスクリームを3つくれ。」

「ありがとうございます。」

 溢れないようにカップに詰めて、マンドラアイスクリームをカリンに手渡した。

「溶けやすいので、氷の魔法で冷やしておくと良いですよ。」

「承知した。では、また来る。」

 上機嫌でカリンは去っていくと、再び行列を成していたエルフ達が押し寄せたのだった。


 
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