776 / 1,052
第五章
宣伝効果は如何に…
しおりを挟む翌日……朝起きてみると、早速異常に気がついた。
俺がフィースタから借りている部屋は屋敷の2階にあるのだが、ここからでも外の騒ぎが聞こえてくるのだ。
「宣伝成功かな。」
そしてせっせと着替えていると、部屋の扉が勢いよく開いて、フィースタが入ってきた。
「あ、あのっ、外が大変なことになってます!!……って、はわわっ!!お、お着替え中にすみません!!」
「いや、構わない。それじゃあちょっと行ってくるよ。」
身なりを整えてから、屋台のある屋敷の外に向かうと、集まっていたエルフ達の視線が一気に俺に集中した。
「昨日のお菓子買いに来たわよ~!!」
「早く作って~!!」
すでに待ち切れない様子のエルフが、フィースタの屋敷の前に大量に詰めかけていた。
「これは大盛況だな。」
急いで屋台の準備を整えて、どら焼きの皮を焼き始める。すると、列の先頭に昨日宣伝をしてくれた二人のエルフの姿を見つけた。
その二人に屋台で作業をしながら声を掛ける。
「宣伝ありがとう。おかげさまで大盛況みたいだ。」
「人間のお兄さん、お菓子とっても美味しくて、友達たくさん呼んできたよ!!」
「あれだけ美味しいものを独り占めってのも、なんか勿体なかったし……か、感謝しなさいよね。」
「あぁ、本当に助かったよ。」
真っ先に二人にできたてのどら焼きを手渡した。
「二人は今日も無料だ。よかったら明日も食べに来てくれ。」
「やった!!人間のお兄さんありがと~!!」
「ま、まぁ気が向いたら明日も来てあげるわ。……ありがと。」
そして二人がどら焼きを食べながら去っていくが、まだまだエルフが大名行列を作っている。これを全て捌き切るのはなかなか骨が折れそうだ。
一つ気合を入れて、接客に当たる
「いらっしゃいませ、どら焼き1つ銀貨1枚です。」
「このお菓子どら焼きっていうんだ……。何個買ってもいいのかな?」
「大丈夫ですよ。」
「それじゃあ……どら焼き10個!!」
「ありがとうございます。」
せっせとどら焼きを売りさばいている最中、見知った顔が行列の先頭に現れた。
「やあ人間くん、商売繁盛してるみたいだねぇ~。」
「おはようリコ。これもリコが作った小豆が美味しいからだよ。」
「またまたぁ~、キミの腕がいいからでしょ~。」
「そんなことはないさ。それで、何個買っていくんだ?」
「えっと、農場で働いてるみんなにも差し入れしたいから……30個ぐらい?」
「30個だな。ちょっと待っててくれ。」
そして30個に少し色を付けて、どら焼きをリコに手渡した。
「おぉ~、ありがとね~。」
「また今度新作のお菓子作るから、その時は試食頼むな。」
「お任せ~!!それじゃ頑張ってね~。」
リコもドラ焼きをたくさん抱えて去っていく……。しかし、まだまだ行列は途切れる様子はない。行列の整備をしてくれているフィースタも大変そうだ。
行列をさばき切ったら、材料の補充とかも含めて一度休憩を挟もう。
そして更にペースを上げて、俺はどら焼きを売りさばいていくのだった。
3
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。


少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる