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第五章
エルフの抱えるもう一つの問題
しおりを挟む農地へと向かう道中……人通りが少なくなり始めた所で、フィースタはエルフが抱えるもう一つの問題について話し始めた。
「実は、私達エルフという種族はもともと男児が産まれにくい種族なんです。そのせいもあって、ここ100年は男児が産まれた事はありません。」
「でも、男の人はいるんだろ?」
その問いかけにフィースタは、ふるふると首を横に振った。
「男性のエルフは、女性のエルフと比べて、とっても寿命が短いんです。最後の希望だった男性のエルフもついこの間…寿命で亡くなってしまいました。」
「じゃあどうするんだ?」
「それが問題なのですよ。今の今まで他種族との交流を絶ってきた私達エルフが、今更交流を再開したいなんて……言い出せる訳ありません。それに反対のエルフも勿論いるでしょうし。」
さぞ困ったように彼女は言った。
「俺は、人間の国王とも、獣人族の国王とも知り合いだが……多分どっちもエルフと交流したいって思ってると思うけどな。」
また100年前のように……な。
「まっ、その為にも俺がこの国にいる間、少しでも人間にも良いやつがいるってことを、エルフのみんなに伝えられれば良いな。」
そう話すと、フィースタはポカン……と呆気にとられたような表情を浮かべた。
「あんなに冷たい目線を送られていたのに……あなた様は前向きですね。」
「まぁ、それが俺の取り柄だからな。」
彼女とそんなことを話している間に、目的の農地に辿り着き、目の前には広大な畑が広がっていた。
「あ、もう着いてしまいましたね。ここが、私達の農地です。」
「おお!!これはすごいな。」
目の前に広がっている畑には、色々な野菜が実っていた。
「あ、国長~っ!!いらっしゃったんですね。」
フィースタの姿を見つけると、麦わら帽子を被ったエルフがこちらへと急いで駆け寄ってきた。
「こんにちは、リコ。今年の野菜はどうですか?」
「世界樹が元気だった頃と比べると、ちょっと大きさは小さいし、量も採れないけど……味はいつもどおりですよ!!寧ろ例年より美味しいかも!!」
採れたばかりの野菜を手にしていた彼女は、自信たっぷりにそう言った。そしてフィースタの隣りにいた俺の存在に気付く。
「あっ!!もしかして今噂の人間ってキミのこと~?」
「はじめまして。」
ペコリとお辞儀をして挨拶をすると、リコと呼ばれていたエルフは少したじろいでいた。
「お、おぉ……エルフの言葉ちゃんと喋れるんだ。それに、礼儀正しいじゃん!!ウチの名前はリコ、この農地の管理人だよ。よろしくね、人間くん。」
意外にも、このリコというエルフは人間に対してもフレンドリーに接してくる。どうやらエルフ全員が、人間を毛嫌いしているというわけではないようだ。
もしかすると……彼女をきっかけに、エルフの人間に対する印象を変えられるかも。
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