771 / 1,052
第五章
突き刺さる視線
しおりを挟む翌朝……起きてすぐに鏡を見てみると、いつの間にやら擬態が解けていて、普通の耳の形に戻っていた。
「時間経過で戻るって感じなのかな。」
自分の意志で解除できないのは少し不便だが……使い道はかなり多いスキルだ。文句は言えない。
「さて、フィースタに会いに行こう。」
彼女に用意してもらった衣服に身を包んで、リビングに向かう。すると、鼻歌を歌いながら上機嫌で朝ごはんを作っている彼女の姿を見つけた。
「おはようフィースタ。」
「あ、おはようございます。もう少しで朝ごはんできますよ。座って待っててください。」
そうは言われたものの、何を調理しているのか気になったしまったので……。彼女の横からひょっこり顔を出して、調理風景を観察することにした。
「あ、あの、座ってていいんですよ?見てても面白いことなんて無いでしょうし……。」
「そんなことはないさ。フィースタには話してなかったけど、俺は料理人でな。こう、知らない食材とかが調理されてるところは、とても興味深いものがあるんだ。」
「料理人……ということは、あなた様は料理を作るのがお上手なのですね?」
「まぁ、そうだな。」
「知らない食材が見たいのであれば……今日一緒に農地を見に行きますか?ちょうど収穫期を迎えた農作物を見回るお仕事があるんです。」
「いいのか?」
「えぇ、構いませんよ。」
「感謝する。」
そして昨日の夕食に続いて、朝食もフィースタ手作りの料理を食べ、彼女と共にエルフの農地へと向かった。
その道中、街を歩いていると、やはりエルフからの視線が痛い。
「……やっぱり人間に対する印象はあんまり良くないんだな。」
「ごめんなさい。あなた様が私達の思っている人間でないことは、私は理解できたのですが……どうしても他の子達は……。」
「いや、フィースタが謝ることじゃない。悪いのは元を辿れば人間だ。」
エルフの大事な世界樹を狙ったのだから、印象が悪くなるのは当然だし、その当時を知ってるエルフも多いだろうからな。
チクチクと突き刺さる視線を感じながら、歩いているとあることに気がついた。
「そういえば、男のエルフっていないのか?」
「……じ、じつはそれが世界樹が枯れ始めていることと同じぐらい、エルフの今後を左右する問題でして……。」
どうやらエルフが抱えていた問題は、世界樹の問題一つではなかったらしい。
2
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる