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第五章
フィースタの手作り料理
しおりを挟むフィースタが作ってくれたのは、色々な野菜と果物がふんだんに使われたサラダと、これまた野菜がたっぷりと入ったスープ、そして乾燥させた果物や木の実が入っているグラノーラのようなものだった。
「お口に合うかわかりませんが……。」
「いや、こうして作ってくれるだけでありがたい。それじゃあ、いただきます。」
いつものように手を合わせ、食前の挨拶をしてから食べ始めた俺を、フィースタは不思議そうに眺めていた。
そして早速、俺はまずスープから口にしてみた。
「おぉ、これはすごいな。野菜の濃厚で甘い出汁がしっかりと味わえて、美味しいな。」
「ほっ……お口にあったなら良かったです。」
癖で感想を口にしていると、フィースタが安心したように胸を撫で下ろしていた。
「この野菜も全部この国で採れたものなのか?」
「そうですよ。世界樹のおかげで、とても美味しい野菜でしょう?」
「あぁ、今まで食べてた野菜の中でも群を抜いてるかもしれない。」
そう言うと、フィースタは嬉しそうに微笑んだ。
「さて、今度はサラダをいただこうかな。」
千切った葉野菜と、極細にカットされた色とりどりの野菜……そして大ぶりにカットされた桃のようなフルーツを一緒に口に運んだ。
「んっ!?これもまた美味しいな。この葉野菜もみずみずしくて、細切りの野菜は噛めば噛むほど甘くなってくる。極め付きはこの桃みたいな果物、てっきり甘いのかと思ったが、ほどほどに酸っぱくていいアクセントになる。」
これならドレッシングはいらないな。野菜そのものの味が良いし、このフルーツが後味もさっぱりとさせてくれる。
これで2品食べたわけだが……ここまでで一つ確信できることがある。フィースタはめちゃくちゃ料理が上手だということだ。
一つ一つの味が強い野菜を使っているのにも関わらず、お互いを邪魔しない組み合わせで調理を行っている。流石はエルフの国長……恐れ入った。
「今度はコレだな。」
乾燥させた果物と木の実をふんだんに使ったグラノーラ。早速、果物と木の実を一緒にスプーンで口に運んでみた。
「んんっ!!これは良いな。毎日食べたいぐらい美味しい。」
ポリポリと心地の良い食感の木の実は、噛み砕くとコクのある濃厚な甘さが感じられる。それだけではくどくなってしまうが、そこに乾燥させたフルーツの酸味が非常に良くマッチしている。
一つ一つの料理を絶賛しながら食べていると、フィースタが少し恥ずかしそうにしていた。
「そ、そんなに褒められると恥ずかしいです。」
「いや、これは誇っていいと思う。めちゃくちゃ美味しいから。」
そして綺麗に料理を平らげると、俺は再び手を合わせた。
「ごちそうさまでした。」
いやはや、本当に美味しい料理だった……。今度俺も何かお返しを考えておこう。
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