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第五章

世界樹の危機

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 フィースタに話を理解してもらえたところで、要件を尋ねることにした。

「それで、俺に何か用か?」

「あ、あぁっ!!忘れるところでした。あの、ゆ、夕食はお食べになりますか?」

「頂けるなら、是非とも。」

 エルフの国に来てしまった時から、ずっと夜目を使っていたせいで、時間感覚が狂ってしまっていたが、今はそういえば夜だったな。

「それでは、どうぞこちらへいらしてください。」

 彼女の後についていき、キッチンへと案内された。

「こちらに座って、少しお待ちください。すぐに作りますから。」

 そして彼女はキッチンに立つと、調理を始めた。手慣れた様子で次々に野菜などを切っていく彼女に、俺はある質問を投げかけた。

「エルフの食文化ってやっぱり野菜中心なのか?」

「基本的には野菜や果物を食べますね。昔こそ、お肉は食べたら厳罰だったのですが……今はそうも言っていられない状態ですので、お肉を食べるエルフもいますよ。」

「その、肉を食べないといけなくなってしまった理由ってのは、もしかして世界樹に何か関係があったりするか?」

 少し踏み込んだ質問をしてみると、ピタリと彼女の手が止まった。

「……ふふ、やはりあなた様は察しがいいですね。その通りです。」

 彼女は再び手を動かしながら、今の世界樹の事について話し始めた。

「世界樹は大地に祝福を与え、豊かにする。そういう力があるんです。50年ほど前までは、その力は健在だったのですが……今となっては、その力もどんどん弱くなってしまい、終いには枯れ始めてしまいました。」

「世界樹が枯れる?なんでまたそんなことが?」

「それは私達にも原因はわかりません。ですが、ついこの間……世界樹が数百年ぶりに雌花を咲かせたんです。」

「……もしかしてその雌花を受粉させて、もう一回世界樹を一から育てようってことか?」

「はい、その通りです。」

 そういうことなら、わざわざ人間の国にある世界樹の雄木の雄花を狙ったのも頷ける理由だな。

「ただ、問題なのは世界樹の残りの寿命です。受粉を無事完了させ、世界樹の果実をちゃんと実らせる事ができるかどうか……。」

 不安そうに彼女は語った。

 そして語り終えると同時に料理も出来上がったらしく、こちらに木製の皿に盛り付けられた料理を運んできてくれた。

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