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第五章
擬態
しおりを挟む今の時間を使って、さっき手に入れたミミックアシッドスライムの力を少し試してみよう。
「やっぱり最初に試したいのは、この擬態だよな。」
どんな姿に化ける事が出来るのだろう……と内心少しワクワクしながら、頭で擬態と強く念じた。すると、頭の中に声が響く。
『擬態可能な姿を選出しています…………選出が完了しました。擬態したい姿を選んでください。』
その声が響いた直後、これまで出会った人や魔物の姿が画面に映し出される。
「ほぉ~……この中なら誰でもいいってわけか。」
擬態可能な姿の一覧には、ドーナ達の姿もあった。彼女達の姿にもなれるということなのだろうが……それは流石に気が引ける。
そして擬態可能な姿を色々と眺めていると、ふと気になるものを見つけた。
「お?これは……。」
俺の目に留まったのは、耳がエルフ耳になった自分自身の姿。
「エルフにも擬態が可能ってわけか。あんまり大きく変わった姿になるのもアレだし、最初はこれから試してみよう。」
画面に映ったその姿に指で触れると……。
『容姿の選択完了。擬態開始します。』
そう声が響いた直後、俺の視界の隅に異様に長く先端が尖った耳が映り込んだ。
「できたか?」
鏡の前に立ってみると、自分の耳がしっかりとエルフ耳になっていた。
「おぉ~、これは感覚とかはどうなってるんだろう。」
試しに耳を触ってみると、もとの自分の耳があった場所以外に感覚は無いということが判明した。
「……この姿に擬態したは良いが、どうやって戻るんだこれ。」
龍化を解除するときと同様に、頭で強く解除したい……と念じてみるが、一向に変化はない。
「困ったな。」
ほとほと困り果てていると、部屋の扉が優しくコンコン……とノックされた。
「あ、あの……入っても良いでしょうか?」
扉の向こうから聞こえたのはフィースタの声。あんまりにもタイミングがよろしくない。
「あ、え、えっと……ちょっと、待っ…………あ。」
返答にも戸惑っているとゆっくりと扉が開き、バッチリ彼女と目があってしまう。すると、目があった瞬間に顔を赤くして、少し俯いた彼女だったが、ついに耳に気づいてしまった。
「はぇ?えっ!?あ、あの……そ、その耳…………。」
「あの~これは……。」
「あなた様はエルフだったのですか!?」
何やら彼女は興奮した様子で、俺の耳をぷにぷにと触って感触を確かめている。
興奮気味な彼女を落ち着かせ、これはスキルによって一時的に姿が変わっているだけ……と説明すると、少し残念そうな表情になってしまったものの、なんとか納得してくれた。
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