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第五章
オークション
しおりを挟む人の波に乗って、俺達も競売場の中へと入り、席についた。すると、続々と競売に参加する人達で会場が埋まっていく。
「すごい人だな……。」
「これみんな、願いが叶う果実を求めてきてるのかしら?」
不安そうにリリンが辺りをキョロキョロと見渡している。
「いや、多分この半数も参加しないと思う。」
ごった返す人々の中に、裕福そうな格好をした人もちらほらと見える。競り合うことになるのは、恐らくあぁいう人達だろう。
俺はここに入るときに渡された、本日競売に掛けられる品物の一覧に目を通す。
「最初は怪鳥クックの卵か。入札金額は……金貨10枚から。」
「怪鳥クック……宝石泥棒の異名がある魔物だねぇ。」
「ずいぶん物騒な異名だな。」
「まぁ、怪鳥クックは宝石商の場所を襲うって有名だからねぇ。」
「……宝石なんか盗んでどうするんだろうな?」
魔物が宝石を盗んで、いったいどうするのだろう?人間じゃあるまいし、売ってお金にするというわけでもないだろう。
それ以外に集める理由があるとすれば……まさか、食べるのか?そんな仮説にたどり着くと、ドーナが答えを教えてくれた。
「怪鳥クックは宝石を食べて、胃の中で全部の宝石を一つにするんだ。で、それが後々卵になってでてくるって訳さ。」
「ほぉ~……面白い奴だな。」
まぁ、宝石商の人からしたら、たまったものではないだろうが……。
ドーナから説明を聞いていると、早速ステージの上にその怪鳥クックの卵が運ばれてくる。
「それでは、早速入札を始めます!!最低価格は金貨10枚です!!」
入札が始まると、怪鳥クックの卵を狙う人達が続々と金額を吊り上げていく。そして最終的に、金貨80枚で落札されていった。
「意外とみんな欲しがるんだな。あぁいうの。」
ポツリとそう呟いていると、次に運ばれてきた競売品を興味深そうにドーナが眺めていた。
「あれ、気になるのか?」
「うん、あれがあったら便利だと思ってねぇ。」
ドーナが眺めていたのは、魔法を込められた手のひらサイズの結晶。説明によると、なにやら脱出の魔法が込められたものらしい。
そして、競売が始まると……早速ドーナが札を上げた。
「金貨50枚。」
「さぁさぁ、いきなり金貨50枚まで来ましたっ!!他に入札希望の方は~?」
そう司会の男性が他の客を煽るように言うと……。
「60枚だ!!」
「こっちは70枚出すぞ!!」
金貨70枚まで吊り上がると、そこからはチビチビと1枚ずつ増えるのみになってしまった。そんな状況に嫌気が差した様子のドーナが、再び札を上げる。
「白金貨1枚だすよ。」
白金貨の力は大きいらしく、ドーナが札を上げて金額を言うと、先程までチマチマと金額を吊り上げていた人達がシン……と静かになってしまう。
「他にはいませんね!?では脱出の結晶……白金貨1枚で落札です!!」
そして無事ドーナは脱出の結晶を入手したのだった。
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