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第五章

ヴェールの恵みフルーツタルト

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 フルーツタルトを運んで行くと、既にみんな集まっていて、本当にお待ちかねのようだった。

「みんなお待たせ。」

 一人一人に行き渡るようにフルーツタルトを切り分け、配っていく。

「すっごい果物がいっぱいね~。」

「これ、全部ヴェールで買ってきた果物かい?」

「あぁ、なかなかユニークな果物がたくさんあってな……どれを使うか、フレイと一緒に悩んでしまった。」

 そう話していると、リリンが少し興奮した様子でフレイを質問攻めしていた。

「フレイ、これあなたが全部作ったの!?」

「え、えっと……ボクはちょっと手伝っただけだよ。」

「そんなことないさ、果物の下にあるクリームとか、果物を切るのだって手伝ってくれたんだぞ?」

「すごいじゃない!!さすがは私の妹ね。」

 リリンは嬉しそうにしながら、フレイの頭をわしゃわしゃと撫で回す。

「それじゃ、そろそろ食べよう。いただきます。」

「「「いただきま~す!!」」」

 そしてみんな一斉に、ヴェールの果物がたっぷりと乗ったフルーツタルトを食べ始める。

「えへへぇ……果物たくさ~ん!!全部美味しくて、幸せ~♪」

「あまくて…ちょっと…すっぱくて…おいしい。」

 これを心待ちにしていたシアとメリッサの二人は、とても幸せそうにフルーツタルトを味わっていた。

 みんな美味しそうに食べているのを、少し嬉しそうにしながら眺めていたフレイに声をかける。

「フレイも食べたほうが良いぞ?折角、自分で作ったんだ美味しいときに食べないと。」
 
「あ、う、うん!!じゃあ……いただきます。」

 フレイも一口フルーツタルトを食べてみると、幸せそうに表情を蕩けさせた。

「ん~、美味し~っ!!これすごいね、たくさん果物が乗ってるのに……ちゃんと全部の味がしっかり感じるよ。」

「それだけヴェールの果物一つ一つの個性が際立ってるってことだな。今度、フレイが気になった果物とか見つけたら、それをフルーツタルトにしてもみんな喜んで食べてくれると思うぞ。」

「が、頑張ってみる!!」

「ふふ、お姉ちゃんはずっと待ってるわ。」

 妹の成長を喜んでいるリリン……、

 この後、ゆっくり味わって食べていたフレイのフルーツタルトに目をつけなければ、姉の尊厳を保てていたはずなのだが……まぁ、それもそれでリリンらしいな。

 そうして美味しく、ヴェールの森の恵を味わい尽くしたのだった。
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