749 / 1,052
第五章
世界樹の雄木
しおりを挟む買い物と観光をしながら、ヴェールの街中を歩いていると、中心部に不思議な木が生えているのを発見した。
「あれは……もしかして、この国に一本しかないって木かな?」
目先にはまるで祀られるように、太いしめ縄を巻かれた大木が聳え立っていた。
「なんか神聖な雰囲気を感じるな。」
「ワシにはただの木にしか見えんなぁ。木を祀るとは……人間の感性はわからんのじゃ。」
まじまじとレイが不思議そうに眺めている。
「そう言えば、この木……なんて名前なのか知らないな。」
この前見た文献には、詳しい名前は載っていなかった。試しにどんな木なのか……鑑定してみよう。
「鑑定。」
そう唱えると、俺の前にこの木の説明が表示された。
世界樹の雄木
・世界の限られた場所に生える、世界樹の雌木を受粉させる為の花を咲かせる木。
「え?世界樹……?」
表示された鑑定結果に思わず目を疑ってしまった。すると、イリスが補足して説明してくれた。
「実は、世界樹という木はこの世界に何本か点在しているんですよ。ただ……果実を実らせる雌の木は、エルフの国にある一本しかないんです。」
その説明は至極わかりやすいものだったが、一つある疑問を俺は抱いた。
「それじゃあ、この木になる果実はいったい?」
「世界樹の雄花は一見果物のように見えますから、それを果実と間違えているのかと。」
「そういうことか。」
ということは、俺達が明日競り落とす予定の果実というのは……世界樹の雄花ということになるんだな。
「ちなみに、この世界樹の雄花が雌花を受粉させると……何ができるんだ?」
「この世界の栄養と魔力をたっぷりと蓄えた、世界樹の果実ができますね。果汁一滴で、枯れた大地を蘇らせるほどの力があるんですよ。」
「ほぉ~……。」
余計に気になってきた。それを食べたらどうなるのだろう?どんな味がする?
「…………その世界樹の果実も気になるけど、何にせよエルフと会えないことには何も始まらないな。」
実をつけるという世界樹の果実は、エルフの国にある。彼らと接触する方法がない以上、その世界樹を拝むことすらも叶わない。
「なにか、きっかけがあればな。」
そんなことを願っていると、こちらに沢山の果物を抱えたフレイが走ってきた。
「ひ、ヒイラギさん!!お菓子に使えそうな果物たくさん買ってきたよ!!」
「ずいぶんたくさん買ったな。」
「えへへ、どれもこれも美味しそうで……気になる果物全部買っちゃったんだ。」
これだけたくさんの種類の果物があれば……色んなお菓子が作れるだろう。ケーキやタルト……フルーツシャーベットとかも美味しそうだ。
「後でこれを使って、一緒にお菓子作ってみるか?」
「うん!!」
フレイとそんな約束を交わしていると、先に買い物に走っていたシア達も、たくさんの野菜や果物を抱えてこちらに戻ってきた。
3
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる